GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』
現代語化
「元園町の先生はいい気分におなりだな」
「君の酒は旨いぜ」
「岸本先生は本当に酔ってないですよね」
「先生は酒も飲まねえし、遊びもしねえし、まさか先生だって女嫌いってわけじゃねえだろうけど――」
「先生は若い姉ちゃんたちを並べて置いて、ただ眺めてるだけだ」
「でも、私はいつまでも先生にそうしていてほしいです」
「先生だけは堕落させたくないと思います」
「私も弱い人間ですよ」
「いや、僕たちみたいなところにまでこうして来てくれるのが、何よりありがたいです。それはもうお察ししてますよ。歌を一つ聴いてみようって気持ちは僕らにもよくわかります……」
「よくそれで我慢できますよね。そんなにしてたら、先生は寂しくないすか……奥さんも迎えにこないし……」
「岸本君が独りでいるのが、今でも僕には不思議です」
「僕は友人としての岸本君を尊敬してるけどさ」
「この男はバカだな」
「ヨウヨウ」
「元園町の先生の十八番が出たな」
「あの『バカ』が出てこないと、元園町の先生は調子が出ないんだろ」
原文 (会話文抽出)
「みじか夜の ゆめはあやなし、 そのうつり香の 悪くて手折ろか ぬしなきはなを、 何のさら/\/\、 更に恋は曲者」
「元園町の先生は好い顔色におなんなすった」
「君の酒は好い酒だ」
「岸本先生は真実に御酔いなすったということが御有んなさらないでしょう」
「先生のは御酒もそう召上らず、御遊びもなさらず、まさか先生だって女嫌いだという訳でもございますまいが――」
「先生は若い姉さん達を並べて置いて、唯眺めてばかりいらっしゃる」
「しかし、私は何時までも先生にそうしていて頂きたいと思います」
「先生だけはどうかして堕落させたくないと思います」
「私だって弱い人間ですよ」
「いえ、手前共のようなところへもこうして御贔屓にしていらしって下さるのが、何よりでございます。そりゃもう御察しいたしております。歌の一つも聞いて見ようという御心持は手前共にもよく分っております……」
「よくそれでも御辛抱が続くと思いますよ。そんなにしていらしって、先生はお寂しか有りませんか……奥さんもお迎えなさらず……」
「岸本君の独りで居るのは、今だに僕には疑問です」
「僕は友人としての岸本君を尊敬してはいますが」
「一体、この男は馬鹿です」
「ヨウヨウ」
「元園町の先生の十八番が出ましたね」
「あの『馬鹿』が出るようでなくッちゃ、元園町の先生は好い御心持に御酔いなさらない」