島崎藤村 『並木』 「今日は疲れた」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『並木』

現代語化

「今日疲れたな」
「相川君、どうして世の中がこんなに急に変わり始めたんだろうね。この2、3年で特に激しい変化が起きたのか、それとも10年前から同じように変わってたのに、僕らが気づかなかっただけなのか」
「そうだろうなあ」
「この2、3年の変化は特に急速なんだろう。こんな世の中になったんだ」
「戦争の影響かしら」
「もちろんそれも理由の1つ。それから、電車ができて交通が激しくなった――区画整理でどんどん町が変わる――東京は今、革命の真っ最中だ」
「海老茶も流行ってるね」
「うん、海老茶ね」
「女も変わった」
「田舎から出てくると、女性の服装の変化に驚くよ。ほんと、華やかで大胆な服装だ。見てよ、通りを行く人それぞれが思い思いのファッションをしてる」
「とにかく、進歩したんだね。着物の色だって、前は割とシンプルなもので満足してた。今は子供の着物ですら、黄色とか赤とかじゃなくて、いろんな色を使うようになった。それだけ進歩したんだろうね」
「でも、相川君、中身も同じように進歩してるのかな」
「もちろんだよ」
「そうかなあ――」
「原君、原君、僕たちがまだ自分の時代だと思ってるうちに、いつの間にか新しい時代が来てるんだね」

原文 (会話文抽出)

「今日は疲れた」
「相川君、何故、こう世の中が急に変って来たものだろう。この二三年、特に激しい変化が起ったのかねえ、それとも、十年前だって同じように変っていたのが、唯吾儕に解らなかったのかねえ」
「そうさなあ」
「この二三年の変化は特に急激なんだろう。こういう世の中に成って来たんだ」
「戦争の影響かしら」
「無論それもある。それから、君、電車が出来て交通は激しくなる――市区改正の為にどしどし町は変る――東京は今、革命の最中だ」
「海老茶も勢力に成ったね」
「うん海老茶か」
「女も変った」
「田舎から出て来て見ると、女の風俗の変ったのに驚いて了う。実に、華麗な、大胆な風俗だ。見給え、通る人は各自に思い思いの風をしている」
「とにかく、進んで来たんだね。着物の色からして、昔は割合に単純なもので満足した。今は子供の着るものですら、黄とか紅とか言わないで、多く間色を用いるように成った。それだけ進歩して来たんだろうね」
「しかし、相川君、内部も同じように進んでいるんだろうか」
「無論さ」
「そうかなあ――」
「原君、原君、まだまだ吾儕の時代だと思ってるうちに、何時の間にか新しい時代が来ているんだね」


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