芥川龍之介 『きりしとほろ上人伝』 「それがしは『れぷろぼす』と申す『しりや』…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『きりしとほろ上人伝』

現代語化

「私は『レプロボス』という『シリア』の国の山男です。最近ふと悪魔の手下になって、はるばるこの『エジプト』の砂漠までやってきましたが、悪魔も主人『エス・キリスト』の力にはかなわず、私1人だけを残して、どこへともなく飛んで行ってしまいました。実は私は日本で一番強いやつを探し出して、その家来になりたいと思っているんです。ですからどうかこれからは、不束ながら御主人『エス・キリスト』の手下に入れてください」
「まあ、なんと物騒なことを...。悪魔の手下になったやつは、枯れ木にバラの花が咲くまで、『エス・キリスト』に会えませんよ」
「そうですか」
「何千年経っても、私は最初の目的を貫き通します。ですからまず『エス・キリスト』の意にかなう行いの仕方を教えてください」
「ご自分は聖書の内容はご存知ですか?」
「残念ながら、1文字も知りません」
「では断食はできますか?」
「何のことか、私は大食漢で有名です。とても断食なんてできません」
「困りましたね。夜通し起きていられることはできますか?」
「何のことか、私は大寝坊で有名です。とても起きていられません」

原文 (会話文抽出)

「それがしは『れぷろぼす』と申す『しりや』の国の山男でおぢやる。ちかごろふつと悪魔の下部と相成つて、はるばるこの『えじつと』の沙漠まで参つたれど、悪魔も御主『えす・きりしと』とやらんの御威光には叶ひ難く、それがし一人を残し置いて、いづくともなく逐天致いた。自体それがしは今天が下に並びない大剛の者を尋ね出いて、その身内に仕へようずる志がおぢやるによつて、何とぞこれより後は不束ながら、御主『えす・きりしと』の下部の数へ御加へ下されい。」
「はてさて、せんない仕宜になられたものかな。総じて悪魔の下部となつたものは、枯木に薔薇の花が咲かうずるまで、御主『えす・きりしと』に知遇し奉る時はござない。」
「れぷろぼす」
「たとへ幾千歳を経ようずるとも、それがしは初一念を貫かうずと決定致いた。さればまづ御主『えす・きりしと』の御意に叶ふべい仕業の段々を教へられい。」
「ごへんは御経の文句を心得られたか。」
「生憎一字半句の心得もござない。」
「ならば断食は出来申さうず。」
「如何なこと、それがしは聞えた大飯食ひでおぢやる。中々断食などはなるまじい。」
「難儀かな。夜もすがら眠らいで居る事は如何あらう。」
「如何なこと、それがしは聞えた大寝坊でおぢやる。中々眠らいでは居られまじい。」


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