芥川龍之介 『きりしとほろ上人伝』 「それがしも人間と生れたれば、あつぱれ功名…

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青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『きりしとほろ上人伝』

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「自分も人間に生まれたからには、ぜひとも立派な功績を上げて、最後は大名出世したい」
「当然だよ。お前の腕があれば、2、3の城を攻め落とすなんて、朝飯前だろう」
「それはそうと」
「でもここに1つ厄介な問題があるんだ。自分は普段は山で狩りばかりしてるから、どの殿様の旗下に立って、戦をすればいいのか、さっぱりわからないんだ。それで今、日本で1番強い武将って、どこの国の将軍なんだい。誰でもいいから、その人の家臣になって、忠義を尽くすことにするよ」
「それならちょうどいい。まず俺たちの調べでは、日本で今一番強いのは『アンティオキアの』皇帝だろう」
「じゃあ、さっそく出発しよう」

原文 (会話文抽出)

「それがしも人間と生れたれば、あつぱれ功名手がらをも致いて、末は大名ともならうずる。」
「道理かな。おぬしほどの力量があれば、城の二つ三つも攻め落さうは、片手業にも足るまじい。」
「れぷろぼす」
「なれどここに一つ、難儀なことがおぢやる。それがしは日頃山ずまひのみ致いて居れば、どの殿の旗下に立つて、合戦を仕らうやら、とんと分別を致さうやうもござない。就いては当今天下無双の強者と申すは、いづくの国の大将でござらうぞ。誰にもあれそれがしは、その殿の馬前に馳せ参じて、忠節をつくさうずる。」
「さればその事でおぢやる。まづわれらが量見にては、今天が下に『あんちおきや』の帝ほど、武勇に富んだ大将もおぢやるまい。」
「さらばすぐさま、打ち立たうず。」


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