GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『三四郎』
現代語化
「なんでかって?20歳くらいの同い年の男女を並べてみたら?女子の方が全部上手い。男はバカにされるだけ。女子だって、自分が軽蔑する男のところに行きたいなんて思わないよ。もちろん、自分が世界で一番偉いと思ってる女子は別やけど。軽蔑する男のところに行かなきゃ独身で暮らすしかないんやから。よく金持ちの娘とかにそういうのいるやん?嫁には行ったけど、旦那を軽蔑してるやつ。美禰子さんはそんなやつよりずっと偉い。その代わり、旦那として尊敬できない人のところには最初から行く気ないし、そういう気じゃないやつと付き合わなきゃダメ。そういう意味ではお前とか俺とか、あの女子の旦那になる資格はないわけよ」
「そりゃ俺も、お前も、あの女子よりずっと偉いわ。お互いこれでも、な?でも、あと5、6年も経たないと、その偉さが彼女の目には入らない。そんで、彼女は5、6年もじっとしてるつもりなんてない。だから、お前があの女子と結婚するのは無理や」
「なに?あと5、6年もすれば、彼女よりずっと上等なのが出てくるよ。日本じゃ今は女子の方が余ってるんやから。風邪ひいて熱が出ちゃってもしょうがない。――なに世の中は広いから、心配するな。実は俺にもいろいろあるんやけど、俺の方がうるさすぎるから、長崎に出張に行くってことで断った」
「なんだ、それって」
「なんだって、俺が関係した女子のことよ」
「なに?女子だって?君みたいなやつが近づいたことのないタイプの女子だよ。それをね、長崎に菌の検査に出張するからしばらくダメだって断ったんだ。そしたらその女子がリンゴを持って駅まで送りに行くって言い出して、俺困ったよ」
「それで、どうしたの?」
「どうしたかわからん。リンゴを持って、駅で待ってたんだろうよ」
「最低なやつだ。よく、そんな悪いことできるね」
「悪いことで、可哀想なことだとはわかってるけど、しょうがない。最初からどんどん、運命にそこまで持っていかれるんやから。実はずっと前から俺医学生だったんだよ」
「なんで、そんな余計な嘘ついたの?」
「それは、またそれぞれの事情があるからさ。それで、女子が病気になった時に、診断を頼まれて困ったこともある」
「その時、舌見たり胸叩いたりして、適当にごまかしたけど、その後に病院に行って、診察してもらったらいいかって聞かれた時は困った」
「そういうこともいっぱいあるから、まあ安心したらいいよ」
原文 (会話文抽出)
「ばかだなあ、あんな女を思って。思ったってしかたがないよ。第一、君と同年ぐらいじゃないか。同年ぐらいの男にほれるのは昔の事だ。八百屋お七時代の恋だ」
「なぜというに。二十前後の同じ年の男女を二人並べてみろ。女のほうが万事上手だあね。男は馬鹿にされるばかりだ。女だって、自分の軽蔑する男の所へ嫁へ行く気は出ないやね。もっとも自分が世界でいちばん偉いと思ってる女は例外だ。軽蔑する所へ行かなければ独身で暮らすよりほかに方法はないんだから。よく金持ちの娘や何かにそんなのがあるじゃないか、望んで嫁に来ておきながら、亭主を軽蔑しているのが。美禰子さんはそれよりずっと偉い。その代り、夫として尊敬のできない人の所へははじめから行く気はないんだから、相手になるものはその気でいなくっちゃいけない。そういう点で君だのぼくだのは、あの女の夫になる資格はないんだよ」
「そりゃ君だって、ぼくだって、あの女よりはるかに偉いさ。お互いにこれでも、なあ。けれども、もう五、六年たたなくっちゃ、その偉さ加減がかの女の目に映ってこない。しかして、かの女は五、六年じっとしている気づかいはない。したがって、君があの女と結婚する事は風馬牛だ」
「なに、もう五、六年もすると、あれより、ずっと上等なのが、あらわれて来るよ。日本じゃ今女のほうが余っているんだから。風邪なんか引いて熱を出したってはじまらない。――なに世の中は広いから、心配するがものはない。じつはぼくにもいろいろあるんだが、ぼくのほうであんまりうるさいから、御用で長崎へ出張すると言ってね」
「なんだ、それは」
「なんだって、ぼくの関係した女さ」
「なに、女だって、君なんぞのかつて近寄ったことのない種類の女だよ。それをね、長崎へ黴菌の試験に出張するから当分だめだって断わっちまった。ところがその女が林檎を持って停車場まで送りに行くと言いだしたんで、ぼくは弱ったね」
「それで、どうした」
「どうしたか知らない。林檎を持って、停車場に待っていたんだろう」
「ひどい男だ。よく、そんな悪い事ができるね」
「悪い事で、かあいそうな事だとは知ってるけれども、しかたがない。はじめから次第次第に、そこまで運命に持っていかれるんだから。じつはとうのさきからぼくが医科の学生になっていたんだからなあ」
「なんで、そんなよけいな嘘をつくんだ」
「そりゃ、またそれぞれの事情のあることなのさ。それで、女が病気の時に、診断を頼まれて困ったこともある」
「その時は舌を見て、胸をたたいて、いいかげんにごまかしたが、その次に病院へ行って、見てもらいたいがいいかと聞かれたには閉口した」
「そういうこともたくさんあるから、まあ安心するがよかろう」