夏目漱石 『三四郎』 「その代りここん所へかけるつもりです」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『三四郎』

現代語化

「その代わりここから先は頑張るつもりです」
「どうですか。ベラスケスの模写ですね。でもあまり上手くできてるとは言えない」
「誰が模写したんですか?」
「三井です。三井はもっと上手いんだけどね。この絵はあまり気に入らない」
「どうもうまい人の絵だと、上手く模写できないものですね」
「もう、全部見ましたか」
「まだ」
「どうですか。もう切り上げて、一緒に出てきませんか。精養軒でお茶でも奢ります。ちょっと用事があるから、どうせすぐに帰らないといけないんだけど。――会のことでね、マネージャーに相談したいことがあるんだ。仲の良い奴だから。――今ちょうどお茶にいい時間ですよ。もう少しすると、お茶には遅すぎるし、晩餐には早すぎるし、中途半端になっちゃう。どうですか。一緒に来てくださいよ」
「せっかく来たんだから、全部見ていきましょうよ。ねえ、小川さん」
「じゃ、こうしましょう。この奥の別室にね。深見さんの遺作があるから、それだけは見て、帰りに精養軒に来てください。先に来て待ってますから」
「ありがとうございます」
「深見さんの水彩画は、普通の水彩画のつもりで見ちゃいけませんよ。どこまでも深見さんの水彩画なんですから。絵を見ようと思じゃなくて、深見さんの気持ちを見ようとすると、なかなか面白いところが見えてきますよ」

原文 (会話文抽出)

「その代りここん所へかけるつもりです」
「どうです。ベラスケスは。もっとも模写ですがね。しかもあまり上できではない」
「どなたがお写しになったの」
「三井です。三井はもっとうまいんですがね。この絵はあまり感服できない」
「どうも、原画が技巧の極点に達した人のものだから、うまくいかないね」
「もう、みんな見たんですか」
「まだ」
「どうです。もうよして、いっしょに出ちゃ。精養軒でお茶でもあげます。なにわたしは用があるから、どうせちょっと行かなければならない。――会の事でね、マネジャーに相談しておきたい事がある。懇意の男だから。――今ちょうどお茶にいい時分です。もう少しするとね、お茶にはおそし晩餐には早し、中途はんぱになる。どうです。いっしょにいらっしゃいな」
「せっかく来たものだから、みんな見てゆきましょう。ねえ、小川さん」
「じゃ、こうなさい。この奥の別室にね。深見さんの遺画があるから、それだけ見て、帰りに精養軒へいらっしゃい。先へ行って待っていますから」
「ありがとう」
「深見さんの水彩は普通の水彩のつもりで見ちゃいけませんよ。どこまでも深見さんの水彩なんだから。実物を見る気にならないで、深見さんの気韻を見る気になっていると、なかなかおもしろいところが出てきます」


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