夏目漱石 『三四郎』 「佐々木が来ました」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『三四郎』

現代語化

「佐々木が来たよ」
「何て言ってました?」
「私にあなたのところへ来いって言ってた」
「そうでしょう。――で、来たの?」
「うん」
「あら、本当だ」
「曇ってきましたね。外は寒いんじゃないですか?」
「いいえ、意外と暖かいですよ。風もほとんどありません」
「そう」
「実は佐々木が金を……」
「知ってるわよ」
「どうしてなくしたの?」
「馬券を買ったんです」
「あら」
「駄目な人よね」
「馬券で当てるなんて、人間関係を読むより難しいじゃないですか。あなたは人名索引のある人間関係さえ読もうとしないのんき者なのに」
「俺が馬券を買ったんじゃないよ」
「あら。じゃあ誰?」
「佐々木が買ったのよ」
「じゃあ、あなたはお金が必要じゃなかったのね。バカみたい」
「俺も必要なんだよ」
「本当?」
「本当だよ」
「でもそれじゃ変じゃない?」
「だから借りなくてもいいんです」
「なんで。嫌なの?」
「嫌じゃないけど、兄さんに黙って、あなたから借りるのはおかしいから」
「どうして? でも兄は知ってるんだもん」
「そうなの。じゃあ借りてもいい。――でも借りなくてもいい。家にそう言ってやれば、一週間くらいで来るから」
「ご迷惑なら、無理に……」

原文 (会話文抽出)

「佐々木が来ました」
「なんと言っていらっしゃいました」
「ぼくにあなたの所へ行けと言って来ました」
「そうでしょう。――それでいらしったの」
「ええ」
「まあ、そうです」
「曇りましたね。寒いでしょう、戸外は」
「いいえ、存外暖かい。風はまるでありません」
「そう」
「じつは佐々木が金を……」
「わかってるの」
「どうしておなくしになったの」
「馬券を買ったのです」
「まあ」
「悪いかたね」
「馬券であてるのは、人の心をあてるよりむずかしいじゃありませんか。あなたは索引のついている人の心さえあててみようとなさらないのん気なかただのに」
「ぼくが馬券を買ったんじゃありません」
「あら。だれが買ったの」
「佐々木が買ったのです」
「じゃ、あなたがお金がお入用じゃなかったのね。ばかばかしい」
「いることはぼくがいるのです」
「ほんとうに?」
「ほんとうに」
「だってそれじゃおかしいわね」
「だから借りなくってもいいんです」
「なぜ。おいやなの?」
「いやじゃないが、お兄いさんに黙って、あなたから借りちゃ、好くないからです」
「どういうわけで? でも兄は承知しているんですもの」
「そうですか。じゃ借りてもいい。――しかし借りないでもいい。家へそう言ってやりさえすれば、一週間ぐらいすると来ますから」
「御迷惑なら、しいて……」


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