夏目漱石 『三四郎』 「君は九州のいなかから出たばかりだから、中…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『三四郎』

現代語化

「おめえは九州の田舎から出てきたばっかだから、東京の文壇の流行りとか知らねえんだろ。だからそんな呑気なこと言ってんだ。今の思想界の中心にいる俺たちは、その激動ぶりを目の当たりにしてるんだから、考える人間が知らんぷりできるわけねえじゃん。実際、今の文壇の権力は完全に俺たち若い奴らが握ってんだ。一言でも半言でも言えることは全部言わなきゃ損なんだよ。文壇はものすごい勢いで変わってて、新しい風に向かって進んでくんだから、取り残されちゃあ大変だ。自分から進んでこの風潮を作っていかなきゃ、生きてる意味ねえよ。文学文学って安っぽく言うけど、あれは大学でやるような文学のことだ。俺たち新しい人間が言う文学は、人生そのものを映し出すもんだ。文学の新しい風潮は日本の社会全体に影響しなきゃいけない。実際、もう影響してる。あいつらが昼寝して夢見てる間に、いつの間にか影響してるんだ。恐ろしいもんだな……」
「そんな気持ちでやってるの?じゃあ原稿料とかはどうでもいいね」
「いや、原稿料はもらうよ。もらえるだけもらう。でも雑誌が売れねえからなかなかもらえねえ。なんとかして、もう少し売れるようにしなきゃいけねえな。何かいいアイデアないか?」
「とりあえずこの雑誌やるから読んでみてくれ。偉大なる暗闇って題が面白いだろ。この題ならみんな驚くに決まってる。驚かせないと読んでもらえねえんだから」
「偉大なる暗闇」

原文 (会話文抽出)

「君は九州のいなかから出たばかりだから、中央文壇の趨勢を知らないために、そんなのん気なことをいうのだろう。今の思想界の中心にいて、その動揺のはげしいありさまを目撃しながら、考えのある者が知らん顔をしていられるものか。じっさい今日の文権はまったく我々青年の手にあるんだから、一言でも半句でも進んで言えるだけ言わなけりゃ損じゃないか。文壇は急転直下の勢いでめざましい革命を受けている。すべてがことごとく動いて、新気運に向かってゆくんだから、取り残されちゃたいへんだ。進んで自分からこの気運をこしらえ上げなくちゃ、生きてる甲斐はない。文学文学って安っぽいようにいうが、そりゃ大学なんかで聞く文学のことだ。新しい我々のいわゆる文学は、人生そのものの大反射だ。文学の新気運は日本全社会の活動に影響しなければならない。また現にしつつある。彼らが昼寝をして夢を見ているまに、いつか影響しつつある。恐ろしいものだ。……」
「そういう精神でやっているのか。では君は原稿料なんか、どうでもかまわんのだったな」
「いや、原稿料は取るよ。取れるだけ取る。しかし雑誌が売れないからなかなかよこさない。どうかして、もう少し売れる工夫をしないといけない。何かいい趣向はないだろうか」
「ともかくこの雑誌を一部君にやるから読んでみてくれ。偉大なる暗闇という題がおもしろいだろう。この題なら人が驚くにきまっている。――驚かせないと読まないからだめだ」
「偉大なる暗闇」


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