GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『三四郎』
現代語化
「結構時間かかってましたね。何か絵描いてたみたいですね。先生も暇ですね」
「どっちが暇かわかんねえよ」
「あれ、何の絵ですか」
「灯台だろ」
「灯台って変わってるな。じゃあ野々宮宗八さんを描いてたってことですか」
「なんで?」
「野々宮さんは外国じゃ有名だけど、日本じゃ全く無名だから。――誰も知らない。それでわずかな給料をもらって、部屋に引きこもって絵を描いてる。――本当に損な商売だ。野々宮さんの顔を見るたびに可哀想で仕方ないよ」
「お前なんか自分の周りをちょっと照らす程度だから、行灯みたいなもんだ」
「小川君、君は明治何年生まれ?」
「僕は23歳です」
「そうだろうな。――先生、僕は行灯とか雁首ってものが嫌いなんです。明治15年以降に生まれたからかもしれないですけど、なんだか古臭くて嫌な気持ちになります。先生はどうですか」
「僕は別に嫌いじゃないよ」
「まあ、君は九州の田舎から出てきたばかりだから、明治元年くらいの感覚なんだろう」
原文 (会話文抽出)
「君が、あんまりよけいな話ばかりしているものだから、時間がかかってしかたがない。いいかげんにして出てくるものだ」
「よほど長くかかりましたか。何か絵をかいていましたね。先生もずいぶんのん気だな」
「どっちがのんきかわかりゃしない」
「ありゃなんの絵です」
「燈台じゃないですか」
「燈台は奇抜だな。じゃ野々宮宗八さんをかいていらしったんですね」
「なぜ」
「野々宮さんは外国じゃ光ってるが、日本じゃまっ暗だから。――だれもまるで知らない。それでわずかばかりの月給をもらって、穴倉へたてこもって、――じつに割に合わない商売だ。野々宮さんの顔を見るたびに気の毒になってたまらない」
「君なぞは自分のすわっている周囲方二尺ぐらいの所をぼんやり照らすだけだから、丸行燈のようなものだ」
「小川君、君は明治何年生まれかな」
「ぼくは二十三だ」
「そんなものだろう。――先生ぼくは、丸行燈だの、雁首だのっていうものが、どうもきらいですがね。明治十五年以後に生まれたせいかもしれないが、なんだか旧式でいやな心持ちがする。君はどうだ」
「ぼくはべつだんきらいでもない」
「もっとも君は九州のいなかから出たばかりだから、明治元年ぐらいの頭と同じなんだろう」