夏目漱石 『野分』 「近頃の本は借金同様だ。信用のないものは連…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『野分』

現代語化

「今の本は借金と同じだ。信用がないものは連帯責任でないと出版できない」
「本当につまらないわね。あんなに夜遅くまでかかって」
「そんなことは本屋には関係ない」
「本屋は知らないでしょうけど。でもあなたならご存知でしょう」
「ハハハハ、本人は知ってるよ。お前も知ってるだろう」
「知ってるから言ってるのよ」
「言ってくれてもいいけど、信用がないから仕方がない」
「それでどうなさるの」
「だから足立のところへ持って行ったんだよ」
「足立さんが書いてくれるって言ったんですか」
「うん、書くようなことを言うから置いてきたら、あとから書けないって断わってきた」
「どうしてなんですか」
「なんでだか知らない。面倒くさいんだろう」
「それであなたはそのままにしておくんですか」
「うん、書かないのを無理に頼む必要はないさ」
「でもそれじゃ、うちの方が困りますわ。この間お兄さんに保証してもらって借りたお金ももう期限が切れるんですから」
「俺もそのお金を返すつもりだったんだけど――売れないから仕方がない」
「馬鹿馬鹿しいのね。何のために苦労したのか、分からないわ」

原文 (会話文抽出)

「近頃の本は借金同様だ。信用のないものは連帯責任でないと出版が出来ない」
「本当につまらないわね。あんなに夜遅くまでかかって」
「そんな事は本屋の知らん事だ」
「本屋は知らないでしょうさ。しかしあなたは御存じでしょう」
「ハハハハ当人は知ってるよ。御前も知ってるだろう」
「知ってるから云うのでさあね」
「言ってくれても信用がないんだから仕方がない」
「それでどうなさるの」
「だから足立の所へ持って行ったんだよ」
「足立さんが書いてやるとおっしゃって」
「うん、書くような事を云うから置いて来たら、またあとから書けないって断わって来た」
「なぜでしょう」
「なぜだか知らない。厭なのだろう」
「それであなたはそのままにして御置きになるんですか」
「うん、書かんのを無理に頼む必要はないさ」
「でもそれじゃ、うちの方が困りますわ。この間御兄さんに判を押して借りて頂いた御金ももう期限が切れるんですから」
「おれもその方を埋めるつもりでいたんだが――売れないから仕方がない」
「馬鹿馬鹿しいのね。何のために骨を折ったんだか、分りゃしない」


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