夏目漱石 『野分』 「その指輪は見馴れませんね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『野分』

現代語化

「その指輪、初めて見る」
「これ?」
「こないだお父さんに買ってもらったの」
「ダイヤか」
「そうよ。天賞堂で買ってもらったんだから」
「お父さん、ずいぶん甘やかしすぎじゃない?」
「違うのよ。お父さんが勝手に買ってくれたの」
「へぇ、珍しい現象だな」
「フフフ、そうでしょ。あなたその理由知ってるんでしょ」
「知るわけねぇだろ、探偵じゃあるまいし」
「だから知らないって言うのよ」
「だから知らないんだよ」
「教えてあげようか」
「うん、教えて」
「教えてあげるから笑っちゃダメよ」
「笑わないよ。こんな真面目な顔してるんだから」
「こないだね、池上に競馬があったでしょ。その時お父さんそっちに行ってさ。そしたら……」
「そしたらどうしたの。――拾ったの?」
「あら、ひどい。失礼な人ね」
「だってさ、続き言わないから」
「今言おうとしてたのよ。そしたら賭けをしたんだって」
「へぇ、そいつはびっくりだ。お父さんもやるんだ」
「うん、普段やらないんだけど、試しにやってみたんだって」
「やっぱりやったんだ」
「やったのよ。そしたら五百円くらい勝ったんだって」
「へぇ。それで指輪買ってもらったの?」
「そうよ」
「ちょっと見せて」

原文 (会話文抽出)

「その指輪は見馴れませんね」
「これ?」
「この間父様に買っていただいたの」
「金剛石ですか」
「そうでしょう。天賞堂から取ったんですから」
「あんまり御父さんを苛めちゃいけませんよ」
「あら、そうじゃないのよ。父様の方から買って下さったのよ」
「そりゃ珍らしい現象ですね」
「ホホホホ本当ね。あなたその訳を知ってて」
「知るものですか、探偵じゃあるまいし」
「だから御存じないでしょうと云うのですよ」
「だから知りませんよ」
「教えて上げましょうか」
「ええ教えて下さい」
「教えて上げるから笑っちゃいけませんよ」
「笑やしません。この通り真面目でさあ」
「この間ね、池上に競馬があったでしょう。あの時父様があすこへいらしってね。そうして……」
「そうして、どうしたんです。――拾って来たんですか」
「あら、いやだ。あなたは失敬ね」
「だって、待っててもあとをおっしゃらないですもの」
「今云うところなのよ。そうして賭をなすったんですって」
「こいつは驚ろいた。あなたの御父さんもやるんですか」
「いえ、やらないんだけれども、試しにやって見たんだって」
「やっぱりやったんじゃありませんか」
「やった事はやったの。それで御金を五百円ばかり御取りになったんだって」
「へえ。それで買って頂いたのですか」
「まあ、そうよ」
「ちょっと拝見」


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