夏目漱石 『吾輩は猫である』 「あの教師あ、うちの旦那の名を知らないのか…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「あの先生、うちの旦那の名前知らないみたいね」
「知るわけないだろ。このへんで金田さんの屋敷を知らないなんて、目と耳がバカなんじゃ」
「呆れちゃうよ。あいつって奴は、本のことしか知らない変人だから。旦那のことちょっとでも知ってたらビビるかもしれないけど、ダメだよ。自分の子供の年齢すら知らないらしいんだ」
「金田さんでもビビらないとか、やっかいな奴だな。でも構わないよ。みんなで脅してやろうぜ」
「いいよ。奥さんの鼻がデカすぎるだの、顔が気に入らないだの――ひどいこと言ってるよ。自分の顔は今戸焼のタヌキみたいなくせに――それでも偉いと思ってるんだから呆れるでしょ」
「顔だけじゃないよ。手ぬぐい持って湯屋に行くところから、やたら高慢ちきじゃないか。自分こそが偉いと思ってるんだよ」
「みんなで一斉にあいつの家の塀の前に行って、さんざん悪口言ってやろうよ」
「そしたらきっとビビるよ」
「でも、姿を見せちゃ面白くないから、声だけ聞かせて、勉強の邪魔をするんだ。できるだけイジめてやれって、さっき奥さんが言ってたよ」
「わかってんだよ」

原文 (会話文抽出)

「あの教師あ、うちの旦那の名を知らないのかね」
「知らねえ事があるもんか、この界隈で金田さんの御屋敷を知らなけりゃ眼も耳もねえ片輪だあな」
「なんとも云えないよ。あの教師と来たら、本よりほかに何にも知らない変人なんだからねえ。旦那の事を少しでも知ってりゃ恐れるかも知れないが、駄目だよ、自分の小供の歳さえ知らないんだもの」
「金田さんでも恐れねえかな、厄介な唐変木だ。構あ事あねえ、みんなで威嚇かしてやろうじゃねえか」
「それが好いよ。奥様の鼻が大き過ぎるの、顔が気に喰わないのって――そりゃあ酷い事を云うんだよ。自分の面あ今戸焼の狸見たような癖に――あれで一人前だと思っているんだからやれ切れないじゃないか」
「顔ばかりじゃない、手拭を提げて湯に行くところからして、いやに高慢ちきじゃないか。自分くらいえらい者は無いつもりでいるんだよ」
「何でも大勢であいつの垣根の傍へ行って悪口をさんざんいってやるんだね」
「そうしたらきっと恐れ入るよ」
「しかしこっちの姿を見せちゃあ面白くねえから、声だけ聞かして、勉強の邪魔をした上に、出来るだけじらしてやれって、さっき奥様が言い付けておいでなすったぜ」
「そりゃ分っているよ」


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