夏目漱石 『吾輩は猫である』 「あなたは寒月の方から御嬢さんに恋着したよ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「あなたは寒月の方からがお嬢さんに惚れたように言ってるけど、俺が聞いた話とはちょっと違うな。迷亭君?」
「うん。あの時の話だと、お嬢さんの方が先に病気になって、何かわけのわからないこと言ってたって話だったよね」
「そんなことありませんよ」
「でも寒月は○○博士の奥さんからそう聞いたって言ってたよ」
「あれはこっちの作戦で、○○博士の奥さんに頼んで寒月の気を引いてもらったんです」
「○○の奥さん、それを知ってて引き受けたの?」
「そう。でもタダじゃ引き受けませんよ。いろいろと物あげたりしてるんです」
「寒月君のこと根掘り葉掘り聞かないと帰らないつもりですか?」
「大丈夫だよ。話したって損はないよ。話そうじゃないか苦沙弥君。奥さん、僕でも苦沙弥でも寒月君のことなら話せることは全部話しますよ。順番に聞いてくれると助かるけど」
「寒月さんも理学士なんですよね?専門は何ですか?」
「大学院では地球の磁気について研究してます」
「へぇー」
「それって博士にならないとできないんですか?」
「博士じゃなきゃできないってわけじゃないけど、ただの学士じゃいくらでもいるから」
「博士になれるかなれないかは僕らもわからないから、他のこと聞いてくださいよ」
「今はその地球の何でしたっけ?の研究をしてるんですか?」
「数日前、理学協会で『首吊りの力学』について発表したそうです」
「えぇー!首吊りだなんて、変な人ですね。そんなことしてたら博士になれませんよ」
「本人が首を吊っちゃダメだけど、首吊りの力学なら博士になれるかもよ」
「そうなんですか?」

原文 (会話文抽出)

「あなたは寒月の方から御嬢さんに恋着したようにばかりおっしゃるが、私の聞いたんじゃ、少し違いますぜ、ねえ迷亭君」
「うん、あの時の話しじゃ御嬢さんの方が、始め病気になって――何だか譫語をいったように聞いたね」
「なにそんな事はありません」
「それでも寒月はたしかに○○博士の夫人から聞いたと云っていましたぜ」
「それがこっちの手なんでさあ、○○博士の奥さんを頼んで寒月さんの気を引いて見たんでさあね」
「○○の奥さんは、それを承知で引き受けたんですか」
「ええ。引き受けて貰うたって、ただじゃ出来ませんやね、それやこれやでいろいろ物を使っているんですから」
「是非寒月君の事を根堀り葉堀り御聞きにならなくっちゃ御帰りにならないと云う決心ですかね」
「いいや君、話したって損の行く事じゃなし、話そうじゃないか苦沙弥君――奥さん、私でも苦沙弥でも寒月君に関する事実で差支えのない事は、みんな話しますからね、――そう、順を立ててだんだん聞いて下さると都合がいいですね」
「寒月さんも理学士だそうですが、全体どんな事を専門にしているのでございます」
「大学院では地球の磁気の研究をやっています」
「へえー」
「それを勉強すると博士になれましょうか」
「博士にならなければやれないとおっしゃるんですか」
「ええ。ただの学士じゃね、いくらでもありますからね」
「博士になるかならんかは僕等も保証する事が出来んから、ほかの事を聞いていただく事にしよう」
「近頃でもその地球の――何かを勉強しているんでございましょうか」
「二三日前は首縊りの力学と云う研究の結果を理学協会で演説しました」
「おやいやだ、首縊りだなんて、よっぽど変人ですねえ。そんな首縊りや何かやってたんじゃ、とても博士にはなれますまいね」
「本人が首を縊っちゃあむずかしいですが、首縊りの力学なら成れないとも限らんです」
「そうでしょうか」


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