夏目漱石 『吾輩は猫である』 「また巨人引力かね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『吾輩は猫である』

現代語化

「また『巨人、引力』かい?」
「そう、いつも『巨人、引力』ばかり書いてるわけじゃないよ。天然居士の墓銘を作ってるんだ」
「天然居士っていうとさ、やっぱり偶然童子みたいな戒名?」
「偶然童子っていうのもあるのかい?」
「いや、ないみたいだけど、そういう感じかなと思ってさ」
「偶然童子ってのは知らないけど、天然居士っていうのは君の知ってるやつだよ」
「一体誰が天然居士なんて名前で偉そうにしているんだい?」
「例の曽呂崎だよ。卒業して大学院に入って『空間論』っていうテーマで研究してたけど、勉強しすぎて腹膜炎で死んじゃった。曽呂崎は仲良かったんだ」
「親友でも何でもいいけどさ、曽呂崎を天然居士に変えたのって誰なの?」
「俺だよ、俺がつけたんだ。そもそも坊主がつける戒名ほど俗なもんはないからさ」
「まあその墓銘ってやつを見せてよ」
「何だ……『空間に生まれ、空間を究め、空間に死す。空たり間たり天然居士噫』」
「なるほど、これはいい。天然居士にふさわしいね」
「だろ?」
「この墓銘を沢庵石に彫って本堂の裏手に力石みたいに置いておいたらいいよ。かっこいいし、天然居士も喜ぶだろう」
「俺もそうしようと思ってるんだ」
「ちょっと失礼するよ。すぐ戻るから、猫でもからかって待っててくれ」

原文 (会話文抽出)

「また巨人引力かね」
「そう、いつでも巨人引力ばかり書いてはおらんさ。天然居士の墓銘を撰しているところなんだ」
「天然居士と云うなあやはり偶然童子のような戒名かね」
「偶然童子と云うのもあるのかい」
「なに有りゃしないがまずその見当だろうと思っていらあね」
「偶然童子と云うのは僕の知ったものじゃないようだが天然居士と云うのは、君の知ってる男だぜ」
「一体だれが天然居士なんて名を付けてすましているんだい」
「例の曾呂崎の事だ。卒業して大学院へ這入って空間論と云う題目で研究していたが、あまり勉強し過ぎて腹膜炎で死んでしまった。曾呂崎はあれでも僕の親友なんだからな」
「親友でもいいさ、決して悪いと云やしない。しかしその曾呂崎を天然居士に変化させたのは一体誰の所作だい」
「僕さ、僕がつけてやったんだ。元来坊主のつける戒名ほど俗なものは無いからな」
「まあその墓碑銘と云う奴を見せ給え」
「何だ……空間に生れ、空間を究め、空間に死す。空たり間たり天然居士噫」
「なるほどこりゃあ善い、天然居士相当のところだ」
「善いだろう」
「この墓銘を沢庵石へ彫り付けて本堂の裏手へ力石のように抛り出して置くんだね。雅でいいや、天然居士も浮かばれる訳だ」
「僕もそうしようと思っているのさ」
「僕あちょっと失敬するよ、じき帰るから猫にでもからかっていてくれ給え」


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