夏目漱石 『門』 「冒険者」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『門』

現代語化

「冒険者」
「何してるのか分からない。私には、牧畜をやってて、しかも成功してるって言ってるけど、全然信用できない。今までよく嘘ついて私を騙してきた奴だから。それに今回東京に来た用事もすっごく怪しい。モンゴル王だかのために金を2万円ほど借りたいんだって。もし貸さないと言ったら自分の信用に関わるって走り回ってるんだ。その最初に捕まったのが私なんだけど、いくらモンゴル王だって、いくら広い土地を抵当にするって言ったって、モンゴルと東京じゃ催促もできないのに。で、私が断ると、陰で俺の嫁に、『あんたのお兄さんは小心者だから大した仕事はできない』って偉そうに言ってるらしい。ふざけんな」
「どうですか、一度会ってみたら?わざわざ毛皮の着いただぼだぼの服なんか着てて、ちょっと面白いんですよ。紹介しましょうか。ちょうど明後日の夜に飯を食わせることになってるから。――と言っても騙されないようにね。黙ってあいつの話を聞いてれば、全然危険はありません。ただ面白いだけです」
「おいでになるのはあなたのお弟さんだけですか?」
「いや、他にも弟の友達でそっちから一緒に来たやつが来るはずになってる。安井とかいう人だけど、私はまだ会ったことがなくて、弟がしきりに私に紹介したがるから、それで二人を呼ぶことにしたんです」

原文 (会話文抽出)

「冒険者」
「何をしているか分らない。私には、牧畜をやっています。しかも成功していますと云うんですがね、いっこう当にはなりません。今までもよく法螺を吹いて私を欺したもんです。それに今度東京へ出て来た用事と云うのがよっぽど妙です。何とか云う蒙古王のために、金を二万円ばかり借りたい。もし借してやらないと自分の信用に関わるって奔走しているんですからね。そのとっぱじめに捕まったのは私だが、いくら蒙古王だって、いくら広い土地を抵当にするったって、蒙古と東京じゃ催促さえできやしませんもの。で、私が断ると、蔭へ廻って妻に、兄さんはあれだから大きな仕事ができっこないって、威張っているんです。しようがない」
「どうです一遍逢って御覧になっちゃ、わざわざ毛皮の着いただぶだぶしたものなんか着て、ちょっと面白いですよ。何なら御紹介しましょう。ちょうど明後日の晩呼んで飯を食わせる事になっているから。――なに引っ掛っちゃいけませんがね。黙って向に喋舌らして、聞いている分には、少しも危険はありません。ただ面白いだけです」
「おいでになるのは御令弟だけですか」
「いやほかに一人弟の友達で向からいっしょに来たものが、来るはずになっています。安井とか云って私はまだ逢った事もない男ですが、弟がしきりに私に紹介したがるから、実はそれで二人を呼ぶ事にしたんです」


青空文庫現代語化 Home リスト