芥川龍之介 『奇怪な再会』 「これは御土産です。お蓮夫人。これはあなた…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『奇怪な再会』

現代語化

「これはお土産です。お蓮さん。これはあなたへのお土産です」
「何よ、これ?」
「張り紙を見てください。膃肭獣です。膃肭獣の缶詰...。あなた気がふさぎがちって言うから、これ一つ献上します。産前、産後、婦人病全部に効くそうです...。これは僕の友達に聞いた宣伝文句ですが、そいつが売り始めた缶詰です」
「食べられるの?お前、膃肭獣なんて?」
「大丈夫です。大丈夫だって...。ねえ、お蓮さん。この膃肭獣ってやつは、雄が1匹いると、雌が100匹もついてるんです。まあ人間にすると、牧野さんみたいなもんです。そう言えば顔も似てるな。だからです。だから1つ牧野さんだと思って...。かわいい牧野さんだと思って食べてください」
「何を言ってるの」
「雄が1匹いるところに...。ねえ、牧野さん、あなたによく似てるでしょう」

原文 (会話文抽出)

「これは御土産です。お蓮夫人。これはあなたへ御土産です。」
「何だい、これは?」
「貼紙を見給え。膃肭獣だよ。膃肭獣の缶詰さ。――あなたは気のふさぐのが病だって云うから、これを一つ献上します。産前、産後、婦人病一切によろしい。――これは僕の友だちに聞いた能書きだがね、そいつがやり始めた缶詰だよ。」
「食えるかい、お前、膃肭獣なんぞが?」
「大丈夫。大丈夫だとも。――ねえ、お蓮さん。この膃肭獣と云うやつは、牡が一匹いる所には、牝が百匹もくっついている。まあ人間にすると、牧野さんと云う所です。そう云えば顔も似ていますな。だからです。だから一つ牧野さんだと思って、――可愛い牧野さんだと思って御上んなさい。」
「何を云っているんだ。」
「牡が一匹いる所に、――ねえ、牧野さん、君によく似ているだろう。」


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