夏目漱石 『こころ』 「へえ、やっぱり同じ病気でね。お気の毒だね…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『こころ』

現代語化

「へえ、やっぱり同じ病気ですか。お気の毒ですね。亡くなった方は何歳でしたか?」
「そのとおりだ。お前が言う通りだ。でも、自分の体は結局自分の体で、その自分の体の養生法は、長年の経験から、自分が一番よくわかってるはずだからね」
「それですよ」
「でも、それでお父さんは自分である程度覚悟はしてるんですよ。今度私が卒業して帰ったのをすごく喜んでるのも、それが理由なんです。生きてるうちに卒業できないと思ったのが、元気なうちに卒業証書を持って帰ったから、それが嬉しいんだって、お父さん自身がそう言ってましたよ」
「そりゃ、お前。口ではそう言うだけでしょう。心の中ではまだ大丈夫だと思ってるよ」
「そうでしょうか?」
「まだまだ10年も20年も生きる気だよ。たまにお父さんが心細いことを言うこともあるけどね。俺もこの調子じゃ長くはないだろうよ、俺が死んだら、お前はどうする?一人でこの家にいるつもりか?」

原文 (会話文抽出)

「へえ、やっぱり同じ病気でね。お気の毒だね。いくつでお亡くなりかえ、その方は」
「もっともだ。お前のいう通りだ。けれども、己の身体は必竟己の身体で、その己の身体についての養生法は、多年の経験上、己が一番能く心得ているはずだからね」
「それご覧な」
「でも、あれでお父さんは自分でちゃんと覚悟だけはしているんですよ。今度私が卒業して帰ったのを大変喜んでいるのも、全くそのためなんです。生きてるうちに卒業はできまいと思ったのが、達者なうちに免状を持って来たから、それが嬉しいんだって、お父さんは自分でそういっていましたぜ」
「そりゃ、お前、口でこそそうおいいだけれどもね。お腹のなかではまだ大丈夫だと思ってお出のだよ」
「そうでしょうか」
「まだまだ十年も二十年も生きる気でお出のだよ。もっとも時々はわたしにも心細いような事をおいいだがね。おれもこの分じゃもう長い事もあるまいよ、おれが死んだら、お前はどうする、一人でこの家にいる気かなんて」


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