夏目漱石 『こころ』 「しかし先生が奥さんを嫌っていらっしゃらな…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『こころ』

現代語化

「でも先生が奥さんを嫌ってないことは保証します。私は先生本人の口から聞いたとおりを奥さんに伝えるだけです。先生は嘘をつかない人でしょう」
「実は私、ちょっと思い当たる節があるんですけど……」
「先生がそうなるきっかけについてですか?」
「はい。もしそれがきっかけだったら私の責任はなくなるから、それだけでも私は楽になれるんですが……」
「どんなことですか?」
「あなたに判断してもらおうと思って言ってるんです」
「私ができる判断ならやります」
「みんなには言えないんです。みんなに言うと怒られるから。怒られないとこだけよ」
「先生がまだ大学にいるとき、すごく仲のいい友達がいたんです。その人がちょうど卒業する少し前に死んだんです。急に死んだんです」
「実は変死したんです」
「どうして?」
「それ以上は言えません。でもそのことがあってからなんです。先生の性格がだんだん変わってきたのは。なぜ友達が死んだのか、私にはわかりません。先生も多分わかってないでしょう。でもそれから先生が変わったと思えば、そう思えないこともないんです」
「その人の墓ですか、雑司ヶ谷にあるのは?」
「それも言わないことになってるから言いません。でも人間って親友を一人亡くしただけで、そんなに変われるものですか?私はそれが知りたくてたまらないんです。だからそこを一つあなたに判断してほしいと思うんです」

原文 (会話文抽出)

「しかし先生が奥さんを嫌っていらっしゃらない事だけは保証します。私は先生自身の口から聞いた通りを奥さんに伝えるだけです。先生は嘘を吐かない方でしょう」
「実は私すこし思いあたる事があるんですけれども……」
「先生がああいう風になった源因についてですか」
「ええ。もしそれが源因だとすれば、私の責任だけはなくなるんだから、それだけでも私大変楽になれるんですが、……」
「どんな事ですか」
「あなた判断して下すって。いうから」
「私にできる判断ならやります」
「みんなはいえないのよ。みんないうと叱られるから。叱られないところだけよ」
「先生がまだ大学にいる時分、大変仲の好いお友達が一人あったのよ。その方がちょうど卒業する少し前に死んだんです。急に死んだんです」
「実は変死したんです」
「どうして」
「それっ切りしかいえないのよ。けれどもその事があってから後なんです。先生の性質が段々変って来たのは。なぜその方が死んだのか、私には解らないの。先生にもおそらく解っていないでしょう。けれどもそれから先生が変って来たと思えば、そう思われない事もないのよ」
「その人の墓ですか、雑司ヶ谷にあるのは」
「それもいわない事になってるからいいません。しかし人間は親友を一人亡くしただけで、そんなに変化できるものでしょうか。私はそれが知りたくって堪らないんです。だからそこを一つあなたに判断して頂きたいと思うの」


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