芥川龍之介 『奇遇』 「お婆さん。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『奇遇』

現代語化

「お婆さん」
「お爺さん」
「まずまず無事に芝居も終わって、こんなにめでたいことはないね」
「本当にこんなめでたいことには、もう二度と会えませんね。ただ私は娘と婿の、苦しそうな嘘を聞いてるのが、それはそれは辛かったですわ。お爺さんは何も知らないように、黙ってろって言うから、一生懸命に我慢しましたが、今さらあんな嘘をつかなくても、すぐに一緒にいられるでしょに...」
「まあ、そんなにうるさく言うなよ。娘も婿も面目なくて、あれこれ考えてついた嘘だ。それに婿の立場では、ああでも言わないと、一人娘は、簡単にはくれなかったかもしれない。お婆さん、お前はどうしたんだ。こんなにめでたい結婚式に、泣いてばかりいてはいかんよ?」
「お爺さん。あなたこそ泣いてるくせに...」

原文 (会話文抽出)

「お婆さん。」
「お爺さん。」
「まずまず無事に芝居もすむし、こんな目出たい事はないね。」
「ほんとうにこんな目出たい事には、もう二度とは遇えませんね。ただ私は娘や壻の、苦しそうな嘘を聞いているのが、それはそれは苦労でしたよ。お爺さんは何も知らないように、黙っていろと御云いなすったから、一生懸命にすましていましたが、今更あんな嘘をつかなくっても、すぐに一しょにはなれるでしょうに、――」
「まあ、そうやかましく云わずにやれ。娘も壻も極り悪さに、智慧袋を絞ってついた嘘だ。その上壻の身になれば、ああでも云わぬと、一人娘は、容易にくれまいと思ったかも知れぬ。お婆さん、お前はどうしたと云うのだ。こんな目出たい婚礼に、泣いてばかりいてはすまないじゃないか?」
「お爺さん。お前さんこそ泣いている癖に……」


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