夏目漱石 『薤露行』 「さればこそ！」…

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青空文庫図書カード: 夏目漱石 『薤露行』

現代語化

「それだからこそ！」
「薔薇の香りに酔う病を、病と許せるのは私たち二人だけ。このキャメロットに集まる騎士は、五本の指を五十回繰り返しても数えきれないほど多いのに、ランスロットが北に行かないのは病気だと疑わない騎士は一人もいません。束の間の危うい逢瀬を楽しんで、ずっと長い永遠の別れに変えてしまうのではありませんか……」
「命は長い賜り物だ、恋は命よりも長い賜り物だ。安心して」
「この冠よ、この冠よ。なぜ私の額を焦がすのか」<ctrl100>

原文 (会話文抽出)

「さればこそ！」
「薔薇の香に酔える病を、病と許せるは我ら二人のみ。このカメロットに集まる騎士は、五本の指を五十度繰り返えすとも数えがたきに、一人として北に行かぬランスロットの病を疑わぬはなし。束の間に危うきを貪りて、長き逢う瀬の淵と変らば……」
「命は長き賜物ぞ、恋は命よりも長き賜物ぞ。心安かれ」
「この冠よ、この冠よ。わが額の焼ける事は」

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