GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『彼岸過迄』
現代語化
「そりゃああなたの金で、あなたが行きたいところに行くんだから、別に問題ないよ。考えてみれば、ちょっと出かけて気分転換するのもいいだろう。行ってくればいい」
「ええ」
「実は大きな声で話すのも申し訳ないけど、叔父さんにあの話を聞いてから、母の顔を見るたびに、変な気持ちになってたまらないんです」
「不愉快になるのかい?」
「いや、ただ気の毒なんです。最初は寂しくって仕方がなかったのが、だんだん少しずつ気の毒に変わってきたんです。実はここだけの話ですけど、最近では母の顔を朝晩見るのがつらいんです。今回の旅行だって、前から卒業したら母に京都大阪と宮島を見物させてあげたいと思ってたから、昔の僕なら一緒に行こうと思って叔父さんに留守を頼みに出かけるんですけど、今言ったような訳で、気持ちが全く逆になってしまって、少しでも母のそばから離れたいってばかり思って」
「困るね、そんなに変わっちゃあ」
「僕は離れたら、またきっと母が恋しくなると思うんですけど、どうでしょう。そううまくいかないですかね?」
原文 (会話文抽出)
「実はあの事件以来妙に頭を使うので、近頃では落ちついて書斎に坐っている事が困難になりましてね。どうしても旅行が必要なんですから、まあ試験を中途で已めなかったのが感心だぐらいに賞めて許して下さい」
「そりゃ御前の金で御前の行きたい所へ行くのだから少しも差支はないさ。考えて見れば少しは飛び歩いて気を換えるのも好かろう。行って来るがいい」
「ええ」
「実は大きな声で話すのも気の毒でもったいないんですが、叔父さんにあの話を聞いてから以後は、母の顔を見るたんびに、変な心持になってたまらないんです」
「不愉快になるのか」
「いいえ、ただ気の毒なんです。始めは淋しくって仕方がなかったのが、だんだんだんだん気の毒に変化して来たのです。実はここだけの話ですけれども、近頃では母の顔を朝夕見るのが苦痛なんです。今度の旅行だって、かねてから卒業したら母に京大阪と宮島を見物させてやりたいと思っていたのだから、昔の僕なら供をする気で留守を叔父さんにでも頼みに出かけて来るところなんですが、今云ったような訳で、関係がまるで逆になったもんだから、少しでも母の傍を離れたらという気ばかりして」
「困るね、そう変になっちゃあ」
「僕は離れたらまたきっと母が恋しくなるだろうと思うんですが、どうでしょう。そう旨くはいかないもんでしょうか」