夏目漱石 『彼岸過迄』 「千代ちゃんのような活溌な人から見たら、僕…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『彼岸過迄』

現代語化

「千代ちゃんみたいな活発な人から見たら、僕みたいな引っ込み思案なやつは、もちろん卑怯に見えるんだろう。僕は思ったことをすぐ口に出したり、そのまま行動に表したりする勇気がない、すごく小心な男だから。その点で卑怯と言われるなら、言われても仕方がないけど……」
「そんなこと誰が卑怯だなんて言うんですか?」
「でも軽蔑はしてるだろう。僕はちゃんと知ってる」
「あなたこそ私を軽蔑してるじゃありませんか。私の方がずっとよく知ってるわ」
「あなたは私を学問のない、理屈が分からない、取るに足らない女だと思って、心の中でバカにしてるんです」
「それはあなたが私をぐずと見下してるのと同じですよ。私はあなたから卑怯と言われても構いませんけど、道徳的に卑怯と言うなら、そりゃああなたの方が間違ってる。私は少なくとも千代ちゃんに関わることについては、道徳的に卑怯な行動をした覚えはないはずです。ぐずとか煮え切らないとか言うべきところに、『卑怯』という言葉を使われると、なんだか道徳的な勇気がない――というか、道徳を理解できない下劣な人間のよう聞こえて、非常に気分が悪いので訂正してもらいたい。それとも今言った意味で、私が何か千代ちゃんに対して申し訳ないことをしたのなら、遠慮なく話してもらおう」
「じゃあ『卑怯』の意味を説明します」

原文 (会話文抽出)

「千代ちゃんのような活溌な人から見たら、僕見たいに引込思案なものは無論卑怯なんだろう。僕は思った事をすぐ口へ出したり、またはそのまま所作にあらわしたりする勇気のない、極めて因循な男なんだから。その点で卑怯だと云うなら云われても仕方がないが……」
「そんな事を誰が卑怯だと云うもんですか」
「しかし軽蔑はしているだろう。僕はちゃんと知ってる」
「あなたこそあたしを軽蔑しているじゃありませんか。あたしの方がよっぽどよく知ってるわ」
「あなたはあたしを学問のない、理窟の解らない、取るに足らない女だと思って、腹の中で馬鹿にし切ってるんです」
「それは御前が僕をぐずと見縊ってるのと同じ事だよ。僕は御前から卑怯と云われても構わないつもりだが、いやしくも徳義上の意味で卑怯というなら、そりゃ御前の方が間違っている。僕は少なくとも千代ちゃんに関係ある事柄について、道徳上卑怯なふるまいをした覚はないはずだ。ぐずとか煮え切らないとかいうべきところに、卑怯という言葉を使われては、何だか道義的勇気を欠いた――というより、徳義を解しない下劣な人物のように聞えてはなはだ心持が悪いから訂正して貰いたい。それとも今いった意味で、僕が何か千代ちゃんに対してすまない事でもしたのなら遠慮なく話して貰おう」
「じゃ卑怯の意味を話して上げます」


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