夏目漱石 『彼岸過迄』 「あなたの経歴談はいつ聞いても面白い。それ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『彼岸過迄』

現代語化

「あなたの昔話はいつも面白い。それどころか、俺みたいな世間のことも知らない奴は、話を聞くたびに勉強させてもらってると思ってます。でもあなたが今までの人生で一番楽しかったことは何ですか?」
「そうですね。あとから考えると、どれもこれも面白くて、どれもこれもつまんないんですけど、俺じゃどれが一番楽しかったのかよくわからないんです。――そもそも楽しいってのは、女関係のことなんですか?」
「そうってわけでもないですけど、あってもいいです」
「はは、やっぱりそっちが聞きたいんですね。――でも雑談抜きでね、田川さん。楽しい楽しくないはさておき、世界中どこにもないくらい気楽な生活をしたことがあるんですよ。それをお話ししましょうか、おやつ代わりに」
「じゃあちょっとトイレ行ってきます」
「その代わり言っておきますけど、女の話は出てこないですよ。女どころか、そもそも人間の話じゃないですから」

原文 (会話文抽出)

「あなたの経歴談はいつ聞いても面白い。そればかりでなく、僕のような世間見ずは、御話を伺うたんびに利益を得ると思って感謝しているんだが、あなたが今までやって来た生活のうちで、最も愉快だったのは何ですか」
「そうですね。やった後で考えると、みんな面白いし、またみんなつまらないし、自分じゃちょっと見分がつかないんだが。――全体愉快ってえのは、その、女気のある方を指すんですか」
「そう云う訳でもないんですが、あったって差支ありません」
「なんて、実はそっちの方が聞きたいんでしょう。――しかし雑談抜きでね、田川さん。面白い面白くないはさておいて、あれほど呑気な生活は世界にまたとなかろうという奴をやった覚があるんですよ。そいつを一つ話しましょうか、御茶受の代りに」
「じゃあちょっと小便をして来る」
「その代り断わっておくが女気はありませんよ。女気どころか、第一人間の気がないんだもの」


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