夏目漱石 『硝子戸の中』 「よく人が云いますね、菓子屋へ奉公すると、…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『硝子戸の中』

現代語化

「よく人が言いますね。菓子屋に奉公すると、どんなに甘いものが好きな男でも、お菓子が嫌いになるって。お彼岸に御萩などを家で作っているところを見てもわかりますよね。作ってる人はただ御萩をお重に詰めるだけなのに、もううんざりした顔をしてるくらいですから。あなたの場合もそんな感じですか?」
「そういうわけでもないようです。とにかく20歳少しまでは平気でしたから」
「たとえあなたが平気でも、相手が平気でない場合がないとも限りませんよね。そんな時には、どうしても誘われがちになるのが当然でしょう」
「今振り返ってみると、なるほどこういう意味でああいうことをしたんだとか、あんなことを言ったんだとか、いろいろ思い当たる節がないわけではありません」
「じゃ全く気づかなかったんですか?」
「まあそうです。それからこちらで気づいたのも1つありました。でも私の心はどうしても、その相手には惹かれなかったんです」

原文 (会話文抽出)

「よく人が云いますね、菓子屋へ奉公すると、いくら甘いものの好な男でも、菓子が厭になるって、御彼岸に御萩などを拵えているところを宅で見ていても分るじゃありませんか、拵えるものは、ただ御萩を御重に詰めるだけで、もうげんなりした顔をしているくらいだから。あなたの場合もそんな訳なんですか」
「そういう訳でもないようです。とにかく廿歳少し過ぎまでは平気でいたのですから」
「たといあなたが平気でいても、相手が平気でいない場合がないとも限らないじゃありませんか。そんな時には、どうしたって誘われがちになるのが当り前でしょう」
「今からふり返って見ると、なるほどこういう意味でああいう事をしたのだとか、あんな事を云ったのだとか、いろいろ思い当る事がないでもありません」
「じゃ全く気がつかずにいたのですね」
「まあそうです。それからこちらで気のついたのも一つありました。しかし私の心はどうしても、その相手に惹きつけられる事ができなかったのです」


青空文庫現代語化 Home リスト