夏目漱石 『坊っちゃん』 「君が来てくれてから、前任者の時代よりも成…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『坊っちゃん』

現代語化

「あなたが来てくれてから、前の先生の時よりも成績がよくなって、校長もすごくいい先生を採用できたと喜んでいるので――学校としても信頼しているから、そのつもりで勉強してほしい」
「へえ、そうですか。今より勉強ができるわけじゃないんですけど――」
「今のままで十分です。ただ前に話したことを覚えていてくれたらいいんです」
「下宿の面倒なんかみるのは危ないってことですか?」
「そんなに露骨に言うと、意味がないんですけど――まぁいいですよ――あなたもそういうことは理解してると思ってるので。それで、あなたがいまみたいに頑張れば、学校の方でもちゃんと見てるから、もう少ししたら都合さえつけば、待遇も多少はどうにかなるんじゃないかと思います」
「へえ、給料ですか。給料は別にどうでもいいんですけど、上がれば上がった方がいいですよね」
「それで幸い、今度転任する先生が一人いるので――もちろん校長に相談してみないと確実なことは言えませんが――その給料の一部を融通してもらえるかもしれないので、それで調整しようと考えています」
「ありがとうございます。誰が転任するんですか?」
「もう発表されるから言ってもいいでしょう。実は古賀先生です」
「古賀先生は、この土地の人なんじゃないですか?」
「地元の人なんですけど、少し都合があって――本人の希望でもあります」
「どこに行くんですか?」
「日向の延岡で――土地柄で、一級給料アップになります」
「代わりの先生は来るんですか?」
「代わりの先生もだいたい決まってます。その代わりの先生が誰になるかで、あなたの給料の調整もできるんです」
「はあ、よかったです。でも無理に上げてもらわなくてもいいです」
「とにかく校長に話はしてみようと思います。校長も同意見のようですが、そのうちあなたがもっと責任のある仕事をすることになるかもしれないから、そのつもりで覚悟しておいてください」
「今より時間が増えるんですか?」
「いや、時間は今より減るかもしれませんけど――」
「時間が減って、もっと働くんですか?変ですね」
「少し聞くと変ですが、――今は詳しく言えませんが――つまり、あなたにもっと重要な責任を持ってほしいという意味です」

原文 (会話文抽出)

「君が来てくれてから、前任者の時代よりも成績がよくあがって、校長も大いにいい人を得たと喜んでいるので――どうか学校でも信頼しているのだから、そのつもりで勉強していただきたい」
「へえ、そうですか、勉強って今より勉強は出来ませんが――」
「今のくらいで充分です。ただ先だってお話しした事ですね、あれを忘れずにいて下さればいいのです」
「下宿の世話なんかするものあ剣呑だという事ですか」
「そう露骨に云うと、意味もない事になるが――まあ善いさ――精神は君にもよく通じている事と思うから。そこで君が今のように出精して下されば、学校の方でも、ちゃんと見ているんだから、もう少しして都合さえつけば、待遇の事も多少はどうにかなるだろうと思うんですがね」
「へえ、俸給ですか。俸給なんかどうでもいいんですが、上がれば上がった方がいいですね」
「それで幸い今度転任者が一人出来るから――もっとも校長に相談してみないと無論受け合えない事だが――その俸給から少しは融通が出来るかも知れないから、それで都合をつけるように校長に話してみようと思うんですがね」
「どうも難有う。だれが転任するんですか」
「もう発表になるから話しても差し支えないでしょう。実は古賀君です」
「古賀さんは、だってここの人じゃありませんか」
「ここの地の人ですが、少し都合があって――半分は当人の希望です」
「どこへ行くんです」
「日向の延岡で――土地が土地だから一級俸上って行く事になりました」
「誰か代りが来るんですか」
「代りも大抵極まってるんです。その代りの具合で君の待遇上の都合もつくんです」
「はあ、結構です。しかし無理に上がらないでも構いません」
「とも角も僕は校長に話すつもりです。それで校長も同意見らしいが、追っては君にもっと働いて頂だかなくってはならんようになるかも知れないから、どうか今からそのつもりで覚悟をしてやってもらいたいですね」
「今より時間でも増すんですか」
「いいえ、時間は今より減るかも知れませんが――」
「時間が減って、もっと働くんですか、妙だな」
「ちょっと聞くと妙だが、――判然とは今言いにくいが――まあつまり、君にもっと重大な責任を持ってもらうかも知れないという意味なんです」


青空文庫現代語化 Home リスト