GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『坊っちゃん』
現代語化
「5円受け取ればそれでいい。下宿を出ようが出まいは俺の勝手だ」
「ところが勝手じゃない。昨日、あそこの大家さんが来て、君に退去してもらいたいと言っていた。大家さんの話を聞いたところ、もっともだと思ったんだ。それでも念のため今さっき確認しに行って、詳しい話を聞いてきた」
「大家さんが君に何を話したのか、俺は知らない。勝手に決められても困るだろう。理由があるなら、理由を言うのが筋だ。大家さんの言ったことが全部正しいなんて、失礼なことを言うな」
「わかった、理由を話そう。君は乱暴者で、下宿で手に負えないんだ。いくら下宿の女将とはいえ、下僕じゃないだろう。足を拭かせるなんて、威張り過ぎだ」
「俺が、いつ下宿の女女将に足を拭かせた?」
「拭かせたかどうだか知らないが、とにかくあそこは、君に困ってるんだ。下宿料の10円や15円は、絵画を一幅売ればすぐに手に入るらしい」
「くだらないことを言うな。それなら、なぜ下宿させていたんだ?」
「なぜ下宿させていたかは知らない。下宿させてはいたけど、嫌になったんだから、出て行けと言っているんだろう。君、出て行ってくれ」
「当然だ。いくらお願いされても、もういる気はない。そもそもそんな理不尽なことを言うような下宿を紹介するなんて、お前も不誠実だ」
「俺が不誠実なのか、君が大人げないのか、どっちだろう」
原文 (会話文抽出)
「氷水の代は受け取るから、下宿は出てくれ」
「一銭五厘受け取ればそれでいい。下宿を出ようが出まいがおれの勝手だ」
「ところが勝手でない、昨日、あすこの亭主が来て君に出てもらいたいと云うから、その訳を聞いたら亭主の云うのはもっともだ。それでももう一応たしかめるつもりで今朝あすこへ寄って詳しい話を聞いてきたんだ」
「亭主が君に何を話したんだか、おれが知ってるもんか。そう自分だけで極めたって仕様があるか。訳があるなら、訳を話すが順だ。てんから亭主の云う方がもっともだなんて失敬千万な事を云うな」
「うん、そんなら云ってやろう。君は乱暴であの下宿で持て余まされているんだ。いくら下宿の女房だって、下女たあ違うぜ。足を出して拭かせるなんて、威張り過ぎるさ」
「おれが、いつ下宿の女房に足を拭かせた」
「拭かせたかどうだか知らないが、とにかく向うじゃ、君に困ってるんだ。下宿料の十円や十五円は懸物を一幅売りゃ、すぐ浮いてくるって云ってたぜ」
「利いた風な事をぬかす野郎だ。そんなら、なぜ置いた」
「なぜ置いたか、僕は知らん、置くことは置いたんだが、いやになったんだから、出ろと云うんだろう。君出てやれ」
「当り前だ。居てくれと手を合せたって、居るものか。一体そんな云い懸りを云うような所へ周旋する君からしてが不埒だ」
「おれが不埒か、君が大人しくないんだか、どっちかだろう」