夏目漱石 『二百十日』 「あの下女は異彩を放ってるね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『二百十日』

現代語化

「あの女中って変だよね」
「そうだな」
「単純でいいやつだよ」
「剛健な趣味はないか」
「うん。実際田舎者の精神に、文明の教育を施すと、立派な人物ができるんだな。もったいないよ」
「そんなに惜しけりゃ、あいつを東京に連れて行って、教育してみればいいよ」
「うん、それもいいな。でもそれより前に文明の皮を剥がさなきゃいけない」
「皮が厚いから大変だろう」
「剥がれても何でもいいから剥がすよ。きれいな顔して、卑しいことばかりやってる。それも金がない奴なら、自分だけで済むんだけど、身分が高いと困る。卑しい根性を社会全体に広げてしまうからね。大迷惑だ。しかも身分が高かったり、お金があったりするものに、よくこういう性根の悪い奴がいるもんだ」
「しかも、そんな奴に限って皮がめちゃくちゃ厚いんだろうな」
「外見はめちゃくちゃ立派なものさ。でも中身はあの女中よりずっとずる賢いんだからね、嫌になっちゃうよ」
「そうか。じゃ、僕もこれから、ちょっと剛健党に入ってみようかな」
「もちろんさ。だからまず第一に明日6時に起きて……」
「お昼にうどんを食べてか」
「阿蘇の火口を見て……」
「癇癪を起こして飛び込まないように注意してか」
「もっとも崇高なる天地間の活力現象に対して、雄大な気象を養って、ちっぽけな俗事を超越するんだ」
「あんまり超越しすぎると後で世の中が嫌になって、かえって困るよ。だからそこのところはほどほどに超越しておくことにしようよ。僕の足じゃとてもそんなに立派に超越できそうもないよ」
「弱い奴だな」

原文 (会話文抽出)

「あの下女は異彩を放ってるね」
「そうさ」
「単純でいい女だ」
「剛健な趣味がありゃしないか」
「うん。実際田舎者の精神に、文明の教育を施すと、立派な人物が出来るんだがな。惜しい事だ」
「そんなに惜しけりゃ、あれを東京へ連れて行って、仕込んで見るがいい」
「うん、それも好かろう。しかしそれより前に文明の皮を剥かなくっちゃ、いけない」
「皮が厚いからなかなか骨が折れるだろう」
「折れても何でも剥くのさ。奇麗な顔をして、下卑た事ばかりやってる。それも金がない奴だと、自分だけで済むのだが、身分がいいと困る。下卑た根性を社会全体に蔓延させるからね。大変な害毒だ。しかも身分がよかったり、金があったりするものに、よくこう云う性根の悪い奴があるものだ」
「しかも、そんなのに限って皮がいよいよ厚いんだろう」
「体裁だけはすこぶる美事なものさ。しかし内心はあの下女よりよっぽどすれているんだから、いやになってしまう」
「そうかね。じゃ、僕もこれから、ちと剛健党の御仲間入りをやろうかな」
「無論の事さ。だからまず第一着にあした六時に起きて……」
「御昼に饂飩を食ってか」
「阿蘇の噴火口を観て……」
「癇癪を起して飛び込まないように要心をしてか」
「もっとも崇高なる天地間の活力現象に対して、雄大の気象を養って、齷齪たる塵事を超越するんだ」
「あんまり超越し過ぎるとあとで世の中が、いやになって、かえって困るぜ。だからそこのところは好加減に超越して置く事にしようじゃないか。僕の足じゃとうていそうえらく超越出来そうもないよ」
「弱い男だ」


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