GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『二百十日』
現代語化
「なるほど遠慮なく振る舞ったら、気持ちいいに決まってるよ。君って豪傑だね」
「隣の部屋の客って、竹刀と小手のことばかり言ってるけど。そもそも何者なんだろう」
「君が華族とお金持ちのことが気になるのと同じようなもんだろう」
「僕のは深い理由があるけど、あっちの客は訳がわからない」
「なんだよ、本人はあれで理解してるんだよ。――で、その小手を取られたんだって――」
「ハハハハ、で、そしたら竹刀を落としたんだね?ハハハハ。なんて呑気なんだろう」
「あれでも実は憤慨家なのかもしれないよ。ほら、草双紙にあるでしょ。「何々という何とか、実は海賊の親玉、毛剃九右衛門」って」
「海賊らしくないよ。さっき温泉に入りに来た時、覗いたら、2人とも木枕をしてぐっすり寝てたよ」
「木枕をして寝られるくらいの頭だから、そしたら、まさにそこで、その、小手を取られるんだね」
「竹刀も取られるんだったっけ?ハハハハ。そういえば赤い表紙の本を胸の上に載せたまま寝てたよ」
「その赤い本が、あの、竹刀を落としたり、小手を取られたりなんだね」
「何だろう、あの本は」
「伊賀の水月だよ」
「伊賀の水月?伊賀の水月ってなんだい」
「伊賀の水月を知らないの?」
「知らない。知らなかったら恥ずかしいかな」
「恥ずかしくはないけど話せないよ」
「話せない?なんで」
「なんでって、君。荒木又右衛門を知らないの?」
「うん、又右衛門か」
「知ってるのかい」
原文 (会話文抽出)
「ああいい心持ちだ」
「なるほどそう遠慮なしに振舞ったら、好い心持に相違ない。君は豪傑だよ」
「あの隣りの客は竹刀と小手の事ばかり云ってるじゃないか。全体何者だい」
「君が華族と金持ちの事を気にするようなものだろう」
「僕のは深い原因があるのだが、あの客のは何だか訳が分らない」
「なに自分じゃあ、あれで分ってるんだよ。――そこでその小手を取られたんだあね――」
「ハハハハそこでそら竹刀を落したんだあねか。ハハハハ。どうも気楽なものだ」
「なにあれでも、実は慷慨家かも知れない。そらよく草双紙にあるじゃないか。何とかの何々、実は海賊の張本毛剃九右衛門て」
「海賊らしくもないぜ。さっき温泉に這入りに来る時、覗いて見たら、二人共木枕をして、ぐうぐう寝ていたよ」
「木枕をして寝られるくらいの頭だから、そら、そこで、その、小手を取られるんだあね」
「竹刀も取られるんだあねか。ハハハハ。何でも赤い表紙の本を胸の上へ載せたまんま寝ていたよ」
「その赤い本が、何でもその、竹刀を落したり、小手を取られるんだあね」
「何だろう、あの本は」
「伊賀の水月さ」
「伊賀の水月? 伊賀の水月た何だい」
「伊賀の水月を知らないのかい」
「知らない。知らなければ恥かな」
「恥じゃないが話せないよ」
「話せない? なぜ」
「なぜって、君、荒木又右衛門を知らないか」
「うん、又右衛門か」
「知ってるのかい」