GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『二百十日』
現代語化
「お寺だけだったら、ちょっと時間が長過ぎたかなと思ったけど。蹄鉄ってそんなに珍しいの?」
「珍しくないけど、見たんだ。あれって、使う道具が何種類あると思う」
「何種類くらいあるんだろ?」
「当ててみてよ」
「当てなくてもいいから教えてよ」
「全部で7種類くらいかな」
「そんなにあるの?何々?」
「何々って、確かに7種類あるんだよ。まず爪を外すノミと、ノミを叩くハンマーと、それから爪を削る小刀と、爪を掘る変なのと、それから……」
「それから何があるの?」
「それから変なのが、他にもいろいろあるんだよ。まず馬がおとなしくて驚いた。あんなに削られても、掘られても平気なんだぜ」
「蹄だからだよ。人間だって、平気で爪切るじゃん」
「人間はそうだけど、馬だよ?」
「馬だって、人間だって爪は同じだろ。君ってのんきすぎだよ」
「のんきだから見ていたんだよ。でも薄暗い所で赤い鉄を叩くと綺麗だよね。バチバチ火花が出るし」
「出るよ、東京でも出るよ」
「東京でも出るのは出るけど、雰囲気が違うよ。こういう山の中の鍛冶屋って、まず音が違う。ほら、ここまで聞こえるでしょ」
原文 (会話文抽出)
「それから鍛冶屋の前で、馬の沓を替えるところを見て来たが実に巧みなものだね」
「どうも寺だけにしては、ちと、時間が長過ぎると思った。馬の沓がそんなに珍しいかい」
「珍らしくなくっても、見たのさ。君、あれに使う道具が幾通りあると思う」
「幾通りあるかな」
「あてて見たまえ」
「あてなくっても好いから教えるさ」
「何でも七つばかりある」
「そんなにあるかい。何と何だい」
「何と何だって、たしかにあるんだよ。第一爪をはがす鑿と、鑿を敲く槌と、それから爪を削る小刀と、爪を刳る妙なものと、それから……」
「それから何があるかい」
「それから変なものが、まだいろいろあるんだよ。第一馬のおとなしいには驚ろいた。あんなに、削られても、刳られても平気でいるぜ」
「爪だもの。人間だって、平気で爪を剪るじゃないか」
「人間はそうだが馬だぜ、君」
「馬だって、人間だって爪に変りはないやね。君はよっぽど呑気だよ」
「呑気だから見ていたのさ。しかし薄暗い所で赤い鉄を打つと奇麗だね。ぴちぴち火花が出る」
「出るさ、東京の真中でも出る」
「東京の真中でも出る事は出るが、感じが違うよ。こう云う山の中の鍛冶屋は第一、音から違う。そら、ここまで聞えるぜ」