芥川龍之介 『河童』 「驚くな」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『河童』

現代語化

「驚くようなもんじゃねえよ」
「それはお前も一般人と同様に耳を持ってないからだ。俺はロックが怖いんだ...」
「お前が?謙遜なんてするなよ」
「誰が謙遜してるって言うんだ?第一、お前らに謙遜するくらいなら批評家たちに謙遜してやるよ。俺は...。クラブは天才だ。その点ではロックなんかに負けてねえ」
「じゃあ何にビビってんだ?」
「よくわかんねえ何かに...。つまり、ロックを操ってる星ってやつに」
「どうも納得いかねえな」
「じゃこう言えばわかるか?ロックは俺の影響を受けねえ。でも俺はいつの間にかロックの影響を受けてしまうんだ」
「それはお前が感受性が...」
「うるせえ。感受性の話じゃねえよ。ロックはいつも安心して自分の得意なことやってる。でも俺はイライラするんだ。それはロックから見れば、ちっぽけな差かもしれねえ。でも俺にとっては10マイルも差があるんだ」
「でも先生の英雄曲は...」
「黙れ。お前らに何がわかんだよ?俺はロックを知ってるんだ。ロックにおべっか使う連中よりもよっぽどロックを知ってるんだ」
「ちょっと落ち着けよ」
「もし落ち着いていられるんだったら...。俺はいつもこう思ってるんだ。...俺たちじゃない何かが、...クラブをからかうためにロックを俺の前に立たせたんだ。哲学者マッグはこういうこと全部知ってるんだ。いつもあの色のついたランプの下で古い本ばっかり読んでるくせに」
「どうして?」
「この間マッグが書いた『阿呆の言葉』っていう本を読んでみろ」
「じゃ今日は失礼するよ」

原文 (会話文抽出)

「驚くな」
「それは君もまた俗人のように耳を持っていないからだ。僕はロックを恐れている。……」
「君が? 謙遜家を気どるのはやめたまえ。」
「だれが謙遜家を気どるものか? 第一君たちに気どって見せるくらいならば、批評家たちの前に気どって見せている。僕は――クラバックは天才だ。その点ではロックを恐れていない。」
「では何を恐れているのだ?」
「何か正体の知れないものを、――言わばロックを支配している星を。」
「どうも僕には腑に落ちないがね。」
「ではこう言えばわかるだろう。ロックは僕の影響を受けない。が、僕はいつの間にかロックの影響を受けてしまうのだ。」
「それは君の感受性の……。」
「まあ、聞きたまえ。感受性などの問題ではない。ロックはいつも安んじてあいつだけにできる仕事をしている。しかし僕はいらいらするのだ。それはロックの目から見れば、あるいは一歩の差かもしれない。けれども僕には十哩も違うのだ。」
「しかし先生の英雄曲は……」
「黙りたまえ。君などに何がわかる? 僕はロックを知っているのだ。ロックに平身低頭する犬どもよりもロックを知っているのだ。」
「まあ少し静かにしたまえ。」
「もし静かにしていられるならば、……僕はいつもこう思っている。――僕らの知らない何ものかは僕を、――クラバックをあざけるためにロックを僕の前に立たせたのだ。哲学者のマッグはこういうことをなにもかも承知している。いつもあの色硝子のランタアンの下に古ぼけた本ばかり読んでいるくせに。」
「どうして?」
「この近ごろマッグの書いた『阿呆の言葉』という本を見たまえ。――」
「じゃきょうは失敬しよう。」


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