芥川龍之介 『じゅりあの・吉助』 「その方どもの宗門神は何と申すぞ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『じゅりあの・吉助』

現代語化

「あなたたちの宗門の神様はなんと言うお名前ですか?」
「ポルトガルの国の王子、イエスキリスト様と、隣国の姫、サンタマリア様です」
「その方たちはどんな姿をしていますか?」
「私たちが夢で拝むイエスキリスト様は、紫の大きな振袖をお召しになった、美しい若者の姿です。サンタマリア姫は、金銀の刺繍が施された、立烏帽子のお姿です」
「なぜその方たちが宗門の神様になったんですか?」
「イエスキリスト様が、サンタマリア姫に恋をしてお慕いをかけ、お亡くなりになったため、私たちと同じ恋の苦しみを持つ人を救おうと思い、宗門の神様になられたそうです」
「あなたはどこの誰からそんな教えを授かったんですか?」
「私たちは3年間、各地を旅しました。その時に海辺で、見知らぬ西洋人から授かりました」
「授かるために、どんな儀式を行ったんですか?」
「お水をいただき、洗礼を受けて、ジュリアンという名前をいただきました」
「それからその西洋人はどこへ行きましたか?」
「それが不思議なことです。ちょうどその時に荒れ狂う波に紛れて、どこへか姿を消しました」
「こんな時に嘘をついたら、それはそれとして罰しますよ」
「なぜ嘘をついたりしましょうか。すべて紛れもない真実です」

原文 (会話文抽出)

「その方どもの宗門神は何と申すぞ。」
「べれんの国の御若君、えす・きりすと様、並に隣国の御息女、さんた・まりや様でござる。」
「そのものどもはいかなる姿を致して居るぞ。」
「われら夢に見奉るえす・きりすと様は、紫の大振袖を召させ給うた、美しい若衆の御姿でござる。まったさんた・まりや姫は、金糸銀糸の繍をされた、襠の御姿と拝み申す。」
「そのものどもが宗門神となったは、いかなる謂れがあるぞ。」
「えす・きりすと様、さんた・まりや姫に恋をなされ、焦れ死に果てさせ給うたによって、われと同じ苦しみに悩むものを、救うてとらしょうと思召し、宗門神となられたげでござる。」
「その方はいずこの何ものより、さような教を伝授されたぞ。」
「われら三年の間、諸処を経めぐった事がござる。その折さる海辺にて、見知らぬ紅毛人より伝授を受け申した。」
「伝授するには、いかなる儀式を行うたぞ。」
「御水を頂戴致いてから、じゅりあのと申す名を賜ってござる。」
「してその紅毛人は、その後いずこへ赴いたぞ。」
「されば稀有な事でござる。折から荒れ狂うた浪を踏んで、いず方へか姿を隠し申した。」
「この期に及んで、空事を申したら、その分にはさし置くまいぞ。」
「何で偽などを申上ぎょうず。皆紛れない真実でござる。」


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