芥川龍之介 『邪宗門』 「その女菩薩の姿では、茉利夫人とやらのよう…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『邪宗門』

現代語化

「その女菩薩の姿は、茉利夫人とも違うようです。いや、これまでの仏菩薩の像にも似てないです。特に赤裸の子供を抱いてる様子は、まるで人間の肉を食う女夜叉みたいだって言うんですか。とにかく日本では見たことがない、邪教の仏なんでしょう」
「そうしてその摩利信乃法師って男は、本当に天狗の化身みたいに見えたそうなんです」
「そうです。姿はまるで火の山の中から羽ばたいて出てきたみたいなんですけど、まさかこの都に、昼間にそんな化け物が現れるなんてことないですよね」
「いや、何とも言い難い。そもそも延喜の天皇の時代には、五条あたりの柿の木の梢に、7日間天狗が仏様になって、白い光を放ったって話があります。また、仏眼寺の仁照阿闍梨を毎日いじめに来たのも、姿は女に見えたけど実は天狗でした」
「まあ、そんな不気味なことを言わないでくださいよ」

原文 (会話文抽出)

「その女菩薩の姿では、茉利夫人とやらのようでもございませぬ。いや、それよりはこれまでのどの仏菩薩の御像にも似ていないのでございます。別してあの赤裸の幼子を抱いて居るけうとさは、とんと人間の肉を食む女夜叉のようだとも申しましょうか。とにかく本朝には類のない、邪宗の仏に相違ございますまい。」
「そうしてその摩利信乃法師とやら申す男は、真実天狗の化身のように見えたそうな。」
「さようでございます。風俗はとんと火の燃える山の中からでも、翼に羽搏って出て来たようでございますが、よもやこの洛中に、白昼さような変化の物が出没致す事はございますまい。」
「いや、何とも申されぬ。現に延喜の御門の御代には、五条あたりの柿の梢に、七日の間天狗が御仏の形となって、白毫光を放ったとある。また仏眼寺の仁照阿闍梨を日毎に凌じに参ったのも、姿は女と見えたが実は天狗じゃ。」
「まあ、気味の悪い事を仰有います。」


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