佐々木味津三 『右門捕物帖』 「ね、だんな、それにしても、あっしゃ解せな…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「ねえ、旦那。それにしても、俺が飲み込めないことがあるんですけど。前の南蛮幽霊の時は、旦那はその耳で手がかりを見つけたって言ってたけど、今回の手がかりはなんで見つけたんですか?俺は、今もってあの女を下手人だと旦那が疑ったのがわかりません」
「それが最初は俺も、俺に似合わず勘違いしてたんだよ。お前からあの片目の用人の息子のダメ人間の話を聞いた時は、すっかり手がかりだと思ったんだが、あとで考えてみると大笑いだよ。旗本の用人ってのは、とにかく立派な侍だろ。その息子なら、どんなにダメ人間でも武士の端くれだから、武士なら仇討ちをするのに、あんな回りくどいことはしないよ。返り討ちになるにしても、1度はバッサリやる気になるんだから。そうしたら、子どもの仕業か、女の仕業か、刀を持つ方法を知らない人間だと考えるのが順序じゃないか。それに、あの時報告に来た敬四郎の手下の者の話を聞くと、まだ屋敷の外に綱を張ってるうちに、また首が床の間にあったって言ったから、こいつ屋敷の中に住んでる人間の仕業だなって思っただけさ。そこに、お前が狐憑きの女がいるって言ったものだから、ピンときたのさ。狐憑きってのは、怪談に関係のある連中だからな」
「なるほどね。でも、あの山伏のまじないは何のためだったんですか?」
「狐憑きが本物か偽物かを試しただけだよ。ところが、大いに偽物さ。本物だったら、一二三四でも百まででも、こっちのマネをするから数えるだけ言われるけどな。こっちで数えないでその逆を言ってみろというと、そこがけだものの浅はかさ、数字の概念がないから、マネなら言えるが、自分で数えることはできないんだよ。しかるに、あの女は偽物だったから、その策略を知らずに、ペラペラとつい人間の本性を出して自分で数えたのさ」
「それにしても、なんで狐憑きなんかのマネをしたのかね。だったら女がバカなことをしたもんです」
「女が命よりも大切な肌を、人の仲間にも入れない非人に許すんだもの、気が狂ったマネでもしなきゃ、正気じゃできないじゃないか」

原文 (会話文抽出)

「ね、だんな、それにしても、あっしゃ解せないことがあるんですがね。このまえの南蛮幽霊のときにゃ、だんなはその耳でほしを聞きあてたとおっしゃいましたが、今度のほしはなんでかぎ出したんでがすかい? あっしにゃ、今もってあの女を下手人とだんなのにらんだことがわかりやせんがね」
「それが初めはおれも、おれに似合わねえ大早がてんをしたものさ。きさまからあの片目の用人のせがれのならず者の話を聞いたときにゃ、てっきりほしと思ったんだが、あとで考えてみると大笑いだよ。お旗本の用人といや、ともかくもりっぱな二本差しの身分だろ。そのせがれなら、いかにならず者でも武士のはしくれだから、武士ならばかたき討つのに、あんなまわりくどいまねはしないよ。返り討ちになるにしても、一度はばっさりやる気になるんだからな。としたら、子どものしわざか、女の子のしわざか、刀持つすべを知らない人間とにらむな順序じゃないか。それに、あのときご注進に来た敬四郎の手下の者の話を聞くと、まだ屋敷の外に綱張っているうちに、また首が床の間にあったといったからな、こいつ屋敷の中に巣食っている人間のしわざだなとにらんだだけさ。そこへきさまが、きつねつきの女がいるといったものだから、ぴんときたのさ。きつねつきときちゃ、怪談に縁のあるしろものだからな」
「なるほどね。しかし、あの御嶽行者のまじないは、なんのためでがしたい?」
「きつねつきがほんものかにせものかをためしただけだよ。ところが、大にせものさ。ほんものだったら、一二三四でも百まででも、こっちの口まねをするから数えるだけいわれるがね。こっちで数えないでその逆をいってみろというと、そこがけだもののあさましさ、数字の観念がないからな、口まねならいえるが、自分で数えることはできないものだよ。しかるに、あの女にせものだったから、その計略を知らずに、べらべらとつい人間の本性を出して自分で数えたのさ」
「それにしても、なんできつねつきなんぞのまねをしたのかね。あったら女がバカなことをしたものじゃごわせんか」
「女が命よりもたいせつなはだを、人の仲間にもはいれない非人に許すんだもの、気違いのまねでもしなきゃ、正気じゃできねえじゃねえか」


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