佐々木味津三 『右門捕物帖』 「だが、一つふにおちないことがあるな。それ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「でも、一つ引っかかることがあるな。そんな不思議な出来事を、小田切久之進って旗本が、なんで今日まで訴えなかったんだろうな」
「そこですよ、そこですよ。俺もそのへんに何かあると睨んでたんですけどね。300石の小身とはいっても、とにかく幕府に直属する旗本だから、奉行様も老中様も、身分としては同じでしょう。そうなると、3日間もそんな化け物騒ぎを隠したり遠慮したりする必要なんてないはずです。なのに、不思議なのは、今日その旗本がこっそり奉行所に来て、奉行様に直接会って、身分柄に関わるから、事件も捜査も極秘にしてくれって言ったらしいんですよ」
「え、本当なのか?」
「本当も本当も、そこはちゃんと嗅ぎつけましたんで。それで、奉行様も、じゃ腕のいい奴に極秘にやらせよう、ってところで、運よく居合わせたのがあばたのあんたなんです。だから、先生大喜びで、今度こそはって意気込んで、自分から引き受けたってことですよ」
「よし、それなら男の意地だ!勝つか負けるか、功名を競ってやるよ」

原文 (会話文抽出)

「だが、一つふにおちないことがあるな。それほどの奇異なできごとを、小田切久之進とやら申すその旗本は、なぜ今日まで訴えずにいたのかな」
「そこでがすよ、そこでがすよ。あっしもねたは存外その辺にあるとにらんだのでがすがね。三百石の小身とはいい条、ともかくもれっきとしたお直参のお旗本なんだから、ご奉行さまだって、ご老中だって、身分がらからいったひにゃ同等なんでがしょう。してみりゃ、なにも三日の間それほどの化け物話を隠しだてしたり、ないしはまた遠慮なんぞするにゃあたらないんだからね。しかるに、おかしなことには、きょうそのお旗本のだんながこっそりお奉行所へやって来て、直接お奉行さまに会ったうえで、身分がらにかかわるんだから、事件のことも、探索のことも、ごく内密にしてくれろといったんだそうでがすよ」
「え? そりゃほんとうか」
「ほんとうともほんとうとも、そこは蛇の道ゃなんとやらで、すっかりかぎ出しちまったんですがね。だもんだから、お奉行さまも、ではだれか腕っこきの者にでもごく内密にやらせましょう、っていってるところへ、運よく行き合わしたのがあばたのあのだんななんです。だから、先生すっかりおどり上がって、今度こそはという意気込みで、自分からそれを買って出たという寸法なんですよ」
「よしッ、そうと聞きゃ男の意地だ! 勝つか負けるか、功名を争ってやろうよ」


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