佐々木味津三 『右門捕物帖』 「首?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「首?」
「そうなんです。それもただの首じゃないんです。まだ血がべっとりと流れてる生首ですよ」
「どこかに転がってたってことですか」
「それが、ただのところに転がってんじゃないんですから、まるで怪談みたいなんですよ。さあ、肝を据えて聞いてくださいね。お屋敷は番町だそうで、小田切久之進っていう50歳を過ぎた旗本だそうです。お給料は300石だとかで、旗本としては小っちゃいんですが、とにかくその旗本のご主人が、寝てる夜中に、急に胸が重くなって、胸のあたりを何かで押さえつけられてるような気がしたんで、びっくりして目を覚ましたら――」
「胸の上に、生首があったんですか」
「そうです、お決まりのように髪がボサボサで。青黒いその生首に、まだ出て間もないような、少しぬるい血がべったりついてるそうです。しかも、女の首で、片目がえぐられてるっていうんです」
「なるほど、ちょっと変わってますね」
「変わってるどころじゃないです。これからゾッとしますから、もう少し聞いてください。その生首が1晩だけじゃないんです。次の晩も、また胸が変に重くなって、目を覚ましたら、今度は座頭坊主の首――」
「え、座頭?盲目ですね」
「そうです。ところが、その生首の盲目の目が、やっぱり片方えぐられてるっていうんですから、これはもう怪談ですよ」
「目はどっち?左?右?」
「それが、女の生首の時も、座頭の生首の時も、どちらも左なんですから、いよいよ怪談ですよ。それでね、騒ぎが段々と大きくなって、3晩目は屋敷中みんなが徹夜で警戒したんですけど、3晩目は生首のお土産が来なかったんです。ちょうど昨日ですね。昨日って、朝からどんよりした雨が降ってましたよね。本当に降りそうで降らないっていうやつでしたが、つい前夜の疲れが出たのか、屋敷中みんながうたた寝してたんです。その雨の真昼間に寝てる旗本のご主人の胸が、やっぱりまた急に重くなったんで、目を覚ましてみたら、今度は老人の生首のお土産が、同じように左の目がえぐられて、べったり生血に染まりながら胸にのっかってたそうですよ」
「ふーん」

原文 (会話文抽出)

「首?」
「さようで、それもただの首じゃごわせんぜ。まだ血のべっとりと流れている生首ですぜ」
「どこかにそいつがころがってでもいたというんか」
「ところが、そいつがただのところにころがっちゃいないんだから、まるで怪談じゃごわせんか。ね、肝をすえてお聞きなせえよ。お屋敷は番町だそうで、名まえは小田切久之進っていうもう五十を過ぎたお旗本だそうながね、お禄高は三百石だというんだから、旗本にしちゃご小身でしょうが、とにかくそのお旗本のだんなが、眠っている夜中に、どうしたことか急に胸が重くなって、なんか胸先のあたりを押えつけられるような気がしましたものだからね、はっと思って、ふと目をあけてみるてえと――」
「胸のうえに、生首が置いてあったというのか」
「さようで、お約束どおりのざんばら髪でね。青黒いその生首に、べっとりと、いま出たばかりと思われるようなまだ少しなまあったかい血がしみているというんですよ。しかも、そいつが女の首で、おまけに片目えぐりぬいてあるっていうんですよ」
「なるほど、少し変わってるな」
「変わってる段じゃない。いまにおぞ毛が立ちますから、もう少しお聞きなせえよ。ところでね、その生首がひと晩きりじゃねえんですよ。あくる晩にも、やっぱりまた胸もとが変に重くなったから、ひょいと目をあけてみるてえと、今度は座頭の坊主首――」
「なに、座頭? めくらだな」
「さようで。ところが、その生首のめくらの目玉が、やっぱり片方えぐりぬいてあるっていうんだから、どうしたってこいつ怪談ですよ」
「目はどっちだ。左か、右か」
「そいつが、女の生首のときも、座頭の生首のときも、同じように左ばかりだというんだから、いよいよもって怪談じゃごわせんか、だからね、騒ぎがだんだんと大きくなって、三晩めには屋敷じゅう残らずの者が徹夜で警戒したっていうんですよ。するてえと、三晩めにはいいあんばいに生首のお進物がやって来なかったものでしたから、ちょうどきのうです、ご存じのように、きのうはいちんち朝から陰気なさみだれでしたね。ほんとうに降りみ降らずみっていうやつでしたが、つい前夜の疲れが出たものでしたから、屋敷じゅうの者残らずがうたた寝をしているてえと、その雨の真昼間に寝ている旗本のだんなの胸先が、やっぱりまた急に重くなったんで、ひょいと目をさましてみると、今度は年寄りの生首のお進物が、同じように左の目をえぐりぬかれて、べっとりと生血に染まりながら胸先にのっかっていたというんですよ」
「ふうむのう」


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