佐々木味津三 『右門捕物帖』 「越前さまのご家中でござりましょうな」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「越前様のご家中にいらっしゃる百合江さんですよね?」
「はい……お屋敷でお仕えしている百合江でございます」
「大抵そうだろうと思って、右門は朝からあなたをお待ちしていましたよ。何しに来たかもわかってますから、隠さないでくださいね。たぶん、石川殿と何かいけないことをしてるんでしょう」
「お察しの通り、杉弥様が連れて行かれたと聞いて、相談しようと思って参りましたが、隠しても無駄であれば、大切な方の生死に関わる大事かもしれません。まだ人前に出せない仲なら仲でしょうから、私が証言して力になります。遠慮なく話してください」
「よくわかりました。恥ずかしいことですが、おっしゃる通り、はまだ人前に出せない関係でございます」
「いつ頃からですか?」
「ちょうど10日ほど前の夜に、初めてあの方から思いを打ち明けられて、恋の誓いをしました」
「そのとき、誰かに見られた記憶はありませんか?」
「いいえ、一切……」
「では、他に前からあなたに好意を寄せていた人はいませんか?」
「それも全く心当たりがありません…」
「そうか。では、別のことを聞きますが、杉弥様と知り合うまでは、親しかったんですか?」
「いいえ、小さい頃から知っていました」
「それなら、杉弥様の友人たちもよくご存知でしょう?」
「はい、道場仲間の5人を存じています」
「その中に左利きで腕の立つ人はいませんか?」
「います。波沼様という方と、要介様と欣一郎様という双子の兄弟が、なぜか生まれた時から揃いも揃って左利きだと聞いています」

原文 (会話文抽出)

「越前さまのご家中でござりましょうな」
「はい……お下屋敷の奥勤めをいたしておりまする百合江と申す者でござります」
「おおかたその辺でござろうと、右門けさからお待ちうけいたしておりました。なんのためにお越しなさったかも存じてござるによって、けっしてお隠しなさってはなりませぬぞ。おそらく、石川殿と秘めごとがござりましょうな」
「察するところ、それあるために、杉弥どのめしとられたと聞いて、てまえに掛け合うためにお越しでござりましょうが、むだなお隠しなさりますれば、いとしいおかたの生死にもかかわる大事でござるぞ。まだ人目を忍ばねばならぬお仲なればお仲のように、拙者が誓ってお力となってしんぜようから、包まずにお明かしめされよ」
「よく納得が参りました。お恥ずかしい仕儀にござりまするが、お目がねどおり、まだ人目を忍ばねばならぬ仲にござります」
「いつごろからでござった」
「つい十日ほどまえのふとした夜さに、はじめてあのかたさまから熱いお心のうちを承りましたので、末始終の恋をお誓いしたのでござります」
「そのとき、だれぞに見とがめられたお記憶はござらぬか」
「いいえ、少しも……」
「では、どなたかほかの者で、まえからお身を慕っていた者にお心当たりはござらぬか」
「それもいっこう存じ寄りはござりませぬ…」
「ほう、ないとな」
「では、異なことをお尋ねするが、そのとき言いかわすまで、杉弥どのとはお近づきでござらなんだか」
「いいえ、幼いころから存じてでござります」
「ならば、杉弥どのの朋輩なぞも、よくご存じでござりましょうな」
「はい、道場通いのころからのご朋輩を五人ほど存じてでござります」
「そのなかに左ききの腕達者の者はござらぬか」
「ござります、ござります、波沼様と申しまして、要介様と欣一郎様と申されるふたごのご兄弟が、どうしたことか、生まれおちるからのそろいもそろった左ききだそうでござります」


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