佐々木味津三 『右門捕物帖』 「ばかばかしいや、だれに頼まれてこんな商売…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「アホくさ、誰に頼まれてこんな商売始めたんですかね。今日は一日で、300匁くらい痩せましたよ」
「おい、伝六」
「え?」
「どうも、俺もおかしくなってきたのかな」
「またわけのわからんこと言ってるけど、どうしたんですか」
「だって、よく考えてみなよ。俺ってむっつり右門って言われてる男なんだぜ」
「でも、柳の下にドジョウがいないときもあるでしょ。時と場合によっては、仕方ないんじゃないですか」
「違うんだよ。俺にはもっと他に、俺流の調べ方があるはずじゃなかったのか」
「あ、なるほど。確かにそうでしたね。あなたの得意技の、からめての戦法ってやつですよ」
「そうなんだよ。今初めて気がついたけど、とんでもない無駄骨を折ってたってことさ。肝心な小姓って重要な手がかりがあることを忘れてるんだから」
「そうなんですよね。逆胴切りの調べから先に始めるなんて、へたくそな調べ方は、せいぜいあばたの人くらいがやるもんです」
「だから、顔を洗い直して、今から俺流を披露するよ」
「今からですか?」
「文句あるか」
「だって、腹ごしらえしないと、俺だって戦はできませんよ」
「それだから、金葉にでもちょっと寄って、お中ぐしを2重ねくらい食べようって言ってるんだよ」
「え、ウナギですか?」
「お前嫌いなのか」
「どうしたって、ウナギってのは、生まれる前から目がありません。でも、この土川町じゃ、目玉が飛び出るほどぼったくられますよ」
「けち臭いこと言うなよ。悲鳴が出るくらいってことは、懐が寒いんだろうから、これをお前にやるよ」
「な、何ですか?――おや、これは切り餅包みですね」
「そうさ、中に入ってるのは、まさに山吹色の25両だよ」
「最近珍しく金持ちになりましたね」
「言っちゃえば、奉行様のお金だよ。これまでの手柄金だって言って、昨日50両も贈り物としてくれたんだ。俺の手柄はお前の手柄なんだから、半分おすそ分けしてやるよ」
「ちぇ、ありがたい。持つべきものは、美人な女房と、いい主人様ですね。こうなったらもう大尽です。今日の分は、全部俺が出しますよ」
「天から降ってきた小判だと思って、調子にのってるな。じゃあ、そろそろ出かけようか」

原文 (会話文抽出)

「ばかばかしいや、だれに頼まれてこんな商売始めたんですかね。あっしゃきょう一日で、三百匁ばかり目方をへらしましたぜ」
「なあ、伝六」
「え?」
「どうやら、おれも焼きが回ったかな」
「不意にまたいくじのねえことおっしゃいますが、どうしてでござんす」
「だって、よく考えてみなよ。おれはかりにもむっつり右門といわれている男なんだぜ」
「でも、柳の下にゃどじょうのいねえときだってあるんだからね。時と場合によっちゃ、しかたがねえじゃござんせんか」
「いいや、そうじゃねえんだよ。おれにはもっとほかに、おれ一流の吟味方法があったはずじゃねえのかい」
「な、なるほどね、大きにそれにちげえねえや。だんなの口癖にしていらっしゃるからめての戦法というやつだ」
「だからよ、今はじめておれも気がついたところだが、とんだむだぼねをおったもんさ。肝心かなめのお小姓というたいせつなほしのいることを忘れているんだからな」
「ちげえねえ、ちげえねえ。逆胴切りの詮議から先に手がけるなんてどじな洗い方は、せいぜいあばたのだんなぐらいにやらしておきゃたくさんですからね」
「だから、ひとつ顔を洗い直して、今からその右門流を小出しにするかね」
「今から?」
「不足かい」
「だって、兵糧をつめないことには、いくらあっしだって、いくさはできませんよ」
「それだから、金葉へでもちょっくら寄って、中ぐしのふた重ねばかりも食べようかといってるんだよ」
「え? うなぎ?」
「おめえきらいか」
「どうつかまつりまして、うなぎときちゃ、おふくろの腹にいたうちから、目がねえんですがね。でも、この土川うちじゃ、目のくり玉の飛び出るほどぼられますぜ」
「しみったれたことをいうやつだな。その悲鳴が出るあんばいじゃ、ふところが北風だろうから、じゃこいつをおめえに半分くれてやろうよ」
「な、なんです?――こりゃだんな、切りもち包みじゃござんせんか」
「そうよ、その中にある品は、まさに判然と山吹き色をした二十五両だよ」
「近ごろ珍しく金満家になったもんですね」
「ねたを割りゃ、お奉行さまのお手元金だよ。これまでのてがら金だといって、きのう五十両ばかりお中元にくだすったのでね、おれのてがらはおめえのてがらなんだから、半分そっちへおすそ分けさ」
「ちッ、ありがてえ。持つべきものは、べっぴんの女房と、いいご主人さまだ。こうなりゃ、もうお大尽です。きょうのおあいそは、みんなあっしが持とうじゃござんせんか」
「天から降った小判だと思って、いやに大束を決めだしたね。では、そろそろ出かけようか」


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