GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』
現代語化
「知らないわけないだろ、あばたの敬四郎だ」
「そうなんですけど、あれだけの調べ方じゃ、ちょっとそそっかしい気がしますよ」
「じゃあ、俺の目は節穴だっていうのか?」
「ど、どういたしまして――。お前の目は、天竺まで届いてるとよくわかってますよ。でも、あばたのあんたは色々と細かく調べてましたよ。墓の荒らし方とか、戒名とかまで一生懸命」
「敬四郎はあの胴切りを、恨みがあるからやったと思ってるんだろう」
「え、どういうことですか……?じゃあ、お前さんは違うんですか?」
「当たり前だ。あれは明らかに、ただの死に胴だめしだ」
「死に胴だめし……?でも、あの仏様たちはまだ若い美女ですよ」
「だから、なおそうだろ。死に胴を試すなら、新仏ほど切りがいがあるんだ」
「それにしたって、新仏なら、他にもいっぱいあったじゃないですか」
「わかってないな。お前はあの女たちの変なところばっかり見てたんだろうが、あれはふたりとも水死体なんだぜ」
「道理で、怪我の跡が全然なくて、死体にしてはやや太りすぎてると思ったんですけど、そしたら、あの仏様たちを水に落としたやつをどこでか知って、あんな真似をしたんですね」
「当たり前だ。しかも、あの犯人は素晴らしい刀の使い手で、しかも左利きだぜ」
「え、左利き……なるほどね。そう言われれば、2体とも左胴だけを切ってたってことを今思い出しました。たしかに違うでしょうね。剣術のことはよくわかりませんが、生きてる相手ならともかく、抵抗も何もできない死人の胴を、わざわざ左から切る必要はないですからね。でも、それにしても、あの門前の変な張り紙はどういうおまじないですか?」
「それが俺の目の節穴じゃなかったってことだよ。お前もあばたの先生も全然気づいてないようだったが、あの墓の5、6間先に、いかにも怪しげな前髪を立てた若者が一人しゃがんでたんだ。どうもあいつがおれたちを見てる目が、とても心配そうにしてておかしいんでな。ひょっとすると、この事件に何か関係してるかもしれないって思ったから、ちょっと右門流の細工をしただけさ」
「ありえない、それならこっちのもんだ。じゃあ、前祝いに駕籠に乗せて行きましょうよ。この暑いのに、右門さんというのを汗びたしにさせちゃったら、俺が女の子たちに会わせる顔がなくなっちゃいますから」
原文 (会話文抽出)
「ちっと、どうもやることがそそっかしいように思われますが、ねえ、だんな、だんなはまさか、今度の仕事の相手に、どんなやつが向こうに回ったか、お忘れじゃござんすまいね」
「知らないでどうするかい、あばたの敬四郎じゃねえか」
「そうでがしょう。だのに、たったあれだけの調べ方じゃ、ちっとどうもそそっかしいように思われますがね」
「じゃ、おれの目は節穴だというのかい」
「ど、どういたしまして――、だんなの目のくり玉は、天竺までにも届いていらっしゃるこたあよっく心得ていますがね。でも、あばたのだんなはいろいろともっと調べていましたぜ。墓のあばき方だとか、戒名なんぞのことまでも必死とね」
「おおかた、敬四郎にゃあの胴切りが、恨みの末のしわざに思われているんだろうよ」
「え、なんですって……? じゃ、だんなはそうじゃないというんですかい」
「あたりめえさ。まさに判然と、ただの死に胴だめしだよ」
「死に胴だめし……? でも、あの仏たちゃまだなまなましい若そうなべっぴんどうしですぜ」
「だから、なおのことそうじゃねえか。死に胴をためすからにゃ、新仏ほど切りがいがあるんだからな」
「それにしたって、新仏ならば、まだいくらもあそこにあったじゃござんせんか」
「わからねえやつだな。おおかた、おめえはあの女どもの妙なところばっかり見ていたんだろうが、ありゃふたりとも水死人だぜ」
「道理でね、いっこうわずらった跡もなし、死人にしちゃちっと太りすぎていると思いましたが、するてえと、なんですね、あれをぶった切った野郎は、どこかであの仏どもの水にはまったことを知っていて、あんなまねしたんですね」
「あたりめえさ。しかも、あの下手人はすばらしいわざ物の持ち主で、おまけに左ききだぜ」
「え? 左きき……なるほどね。そういわれれゃ、二つとも左胴ばかりをぶった切っていたこと今あっしも思い当たりやしたが、大きにそれにちげえねえや。剣術のことはよくあっしゃ知らねえが、生きている相手ならともかく、手向かいもなんにもしねえ死人の胴を、なにもわざわざ左から切るこたあねえからね。しかし、それにしても、あの門前のおかしな張り紙は、いったいなんのおまじないですかい」
「それがおれの目の節穴じゃねえといったいわれだよ。おめえもあばたの先生もいっこう気がつかねえような様子だったが、あの墓の五、六間先に、子細ありげな前髪立ての若衆がひとりしゃがんでいたんだ。どうもそいつのおれたちを見張っている眼の配りが、とても心配顔でただごとじゃねえと思ったからね。ひょっとすると、なにかこの事件にひっかかりがあるかもしれねえなとにらみがついたから、ちょっと右門流の細工をしたまでさ」
「ありがてえッ、そうと聞きゃ、もうこっちのものだ。じゃ、前祝いに駕籠をおごろうじゃござんせんか。この暑いのに、右門のだんなともあろうおかたを汗びたしにさせたといっちゃ、あっしが女の子たちに合わす顔がござんせんからね」