佐々木味津三 『右門捕物帖』 「ひどくまとまって粒がちっちゃいが、まさか…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「ひどくまとまって粒が小さいが、まさかおもちゃじゃあるまいね」
「そう思えるでしょう、だから、私もさっきからこうやって、じっと見ていたんですよ」
「じゃ、お前が連れてきたんじゃねえのかい」
「いや、連れてきたのは、もちろん私ですがね、それにしたって、どうも少し変すぎるから気味悪がっているんですよ」
「何が変っているんだ、少し造りが小さいだけで、見りゃなかなか賢そうじゃねえか」
「ところが、一向バカだかり利口だかり見当がつかねえんですよ。年はやっと9つだとかいうんだがね。さっき通りがかりに見たら、熊を切ると言って、しきりと釣鐘を叩いていたんですよ」
「禅問答みたいだな。じゃなにかい、その釣鐘が熊のかっこうでもしていたのかい」
「いえ、それなら何も私も不思議に思やしねえんだがね。実はきょう池ノ端にちょっと用足しがあって、今さっき行ったんですよ。すると、その帰りに切り通しを上がってきたらね、あそこの源空寺っていうお寺の門前で、しきりとこのお坊さんが、その門のところに転がしてあった釣鐘を竹刀で叩いていましたからね、なにふざけた真似をするんだ、釣鐘だってそんなもので叩かれりゃ痛いじゃねえかっていったら、いまさっきいったように、こうやって熊を切るんだっていうんですよ」
「じゃ、それがおかしいんで、引っ張ってきたんだな」
「ええ、まあ、言えばそうなんだが、その先が少し不思議だから、そう急がずにお聞きなせえよ。だから、私も妙なことを言う豆坊だなと思いましたからね、だって、この釣鐘が熊の形も犬のかっこうもしていないじゃねえかって聞いてやったら、当たり前だい、釣鐘が熊や狛犬のかっこうしていたら、おじさんの頭はとっくに三角のはずだいって、こんなことを言うんですよ」
「ほうほう、なかなか達者だな。じゃ、なんだっていうんだな。その釣鐘を稽古台にして、剣術の稽古でもしていたっていうんだな」
「そ、そうなんですよ。だから、いよいよ訳がありそうだなと思いやしたから、どこにその熊がいるんだって聞いてやったら、どこにいるかわからねえが、うちの大切な兄ちゃんがその熊に殺されたから、それで仇を取るためこうやって、毎日稽古しているんだっていうのでね、ひょっとすると、こいつあまた旦那の畑だなと気がついたものだから、何はともあれいっぺんお目にかけなきゃと思って、わざわざ引っ張ってきたんですよ」
「そうか、なかなか禅味のある話でおもしろえや。蛇が出るかヘビが出るか知らねえが、じゃ俺がひとつ当たってみよう」

原文 (会話文抽出)

「ひどくまとまって粒がちっちゃいが、まさかおもちゃじゃあるまいね」
「そう思えるでしょう、だから、あっしもさっきからこうやって、しげしげと見物していたんですよ」
「じゃ、おめえが連れてきたんじゃねえのかい」
「いいえ、連れてきたな、いかにもあっしですがね、それにしたって、どうも少し変わりすぎているから気味悪がっているんですよ」
「何が変わっているんだ、少し造りが小粒なだけで、見りゃなかなか利発そうじゃねえか」
「ところが、いっこうバカだかりこうだか見当がつかねえんですよ。年はやっと九つだとかいうんだがね。さっき通りがかりに見たら、くまを切るんだといって、しきりとつり鐘をたたいていたんですよ」
「禅の問答みたいだな。じゃなにかい、そのつり鐘がくまのかっこうでもしていたのかい」
「いいえ、それならなにもあっしだって不思議に思やしねえんだがね。実あきょう池ノ端にちょっと用足しがあって、いまさっき行ったんですよ。するてえと、そのかえり道に切り通しを上がってきたらね、あそこの源空寺っていうお寺の門前で、しきりとこのお小僧さんが、その門のところにひっころがしてあったつり鐘を竹刀でたたいていましたからね、なにふざけたまねするんだ、つり鐘だってそんなものでたたかれりゃいてえじゃねえかっていったら、いまさっきいったように、こうやってくまを切るんだっていうんですよ」
「じゃ、それがおかしいんで、ひっぱってきたんだな」
「ええ、ま、そういえばそうなんだが、その先が少し不思議だから、そう急がずにお聞きなせえよ。だから、あっしも妙なことをいう豆僧だなと思いましたからね、だって、このつり鐘がくまの形も犬のかっこうもしていねえじゃねえかってきいてやったら、あたりめえだい、つり鐘がくまやこまいぬのかっこうしていたら、おじさんの頭はとっくに三角のはずだいって、こんなことをいうんですよ」
「ほほう、なかなか達者だな。じゃ、なんだっていうんだな。そのつり鐘をけいこ台にして、剣術のけいこでもしていたっていうんだな」
「そ、そうなんですよ。だから、いよいよいわくがありそうだなと思いやしたから、どこにそのくまがいるんだってきいてやったら、どこにいるかわからねえが、うちのたいせつなあんちゃんがそのくまに殺されたから、それでかたきを取るためこうやって、毎日けいこしているんだっていうのでね、ひょっとすると、こいつあまただんなの畑だなと気がついたものだから、何はともあれいっぺんおめがねにかけなくちゃと思って、わざわざひっぱってきたんですよ」
「そうか、なかなか禅味のある話でおもしれえや。蛇が出るか蛇が出るか知らねえが、じゃおれがひとつ当たってやろう」


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