GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』
現代語化
「へえ、荷物を持って?」
「バスケットだの、カバンだの、風呂敷包みだの、結構持っていったんですよ。実は昨日、つまらないことでちょっと喧嘩したもんですから、―――」
「それで本人は、こちらへ来ると言って出かけたんですか」
「相手が言うんじゃなくて、僕がそう言ってやったんですよ。『ここからすぐに浅草へ帰って、人を寄越せ』って。―――どなたかが来てくだされば話が分かると思ったもんですから」
「へえ、なるほど。―――でもとにかく私は行きませんよ。そう言うと追いかけて来るかもしれませんが」
「でも彼女、昨夜からなら分からないよ」
「それはどこか、心当たりがあれば探してみてください。もう今まで来なければ、こちらへは帰って来ないでしょう」
「それとナオちゃんはさっぱり家へ寄り付かないんです。あれはとっくに、いつだったかしら?―――もう2か月も顔を見てないんですよ」
「それでは済みませんが、もしもこちらに来たら、たとえ本人が何を言っても、すぐに私のところへ知らせていただけませんか」
「ええ、それはもう。私の方では今更あの子をどうこうする気はないんですから、来ればすぐに知らせますよ」
原文 (会話文抽出)
「おかしいな、どうも、………荷物も沢山持っていたんだし、あのまま何処へも行かれる筈はないんだけれど。………」
「へえ、荷物を持って?」
「バスケットだの、鞄だの、風呂敷包みだの、大分持って行ったんですよ。実は昨日、つまらないことでちょっと喧嘩したもんですから、………」
「それで当人は、此処へ来ると云って出たんですか」
「当人じゃあない、僕がそう云ってやったんですよ、これから直ぐに浅草に帰って、人を寄越せッて。―――誰かあなた方が来て下されば話が分ると思ったもんですから」
「へえ、成る程、………だけどとにかく手前共へは参りませんのよ、そう云うことなら追っ付け来るかも知れませんけれど」
「だけどもお前、昨夜ッからなら分りゃしねえぜ」
「そりゃ何処か、お心当りがおあんなすったら外を捜して御覧なさい。もう今まで来ねえようじゃあ、此処へ帰っちゃ来ますまいよ」
「それにナオちゃんはさっぱり家へ寄り付かないんで、あれはこうッと、いつだったかしら?―――もう二た月も顔を見せたことはないんですよ」
「では済みませんが、もしも此方へ参りましたら、たとい当人が何と云おうと、早速どうか僕の所へ知らして戴きたいんですが」
「ええ、そりゃあもう、あッしの方じゃ今更あの児をどうするッて気はねえんですから、来れば直ぐにも知らせますがね」