GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』
現代語化
「バカ言うなよ」
「うふふふふ、そんなに偉そうにするなら、降参させてあげようか」
「おい、おい、ちょっと落ち着いてよ。そういう話は明日の夜にしてよ」
「賛成!」
「今夜はみんな公平にしてほしいな」
「だから公平にしてるじゃないの。恨みっこがないように、浜さんの方にはこっちの足を出してるし、譲治さんの方にはこっちを出してるし…」
「じゃあ自分は?」
「お母さんは一番得してるわよ。一番私の近くにいて、こんなところに首つっこんでるじゃない」
「光栄至極だね」
「そうよ、あなたが一番優遇よ」
「でもお前、まさかこのまま一晩中起きてるわけじゃないだろう。一体寝る時はどうなるんだい?」
「さあ、どうしようかな。どちらに頭を向けようかな。浜さんにしようか、譲治さんにしようか」
「そんな頭はどちらに向けたって、どうってことないよ」
「いや、そうじゃないよ。お母さんは真ん中だからいいが、僕にとっては問題だよ」
「そう?浜さん、じゃあ浜さんの方を頭にする?」
「だからそれが問題なんだよ。こっちに頭を向けられても心配だし、そうかと言って河合さんの方に向けられても、やっぱり何だかやきもち焼いちゃうし…」
「それに、この女は寝相が悪いぜ」
「気をつけないと、足を向けられた方は夜中に蹴り飛ばされるかもしれないぜ」
「どうですか河合さん、ほんとに寝相が悪いの?」
「ええ、悪いですよ。それも一通りじゃありませんよ」
「おい、浜田」
「え?」
「寝ぼけて足の裏をなめたってね」
「足舐めたっていいじゃないの。譲治さんなんかいつもだわよ。顔より足の方がかわいいくらいだって言うんだもの」
「それは一種のフェティシズムだね」
「だってそうなのよ。ねえ、譲治さん、そうじゃなかったの?あなたは本当は足の方が好きなんだわね?」
「公平にしなきゃ悪い」
原文 (会話文抽出)
「呆れたなんて嘘なのよ。あたしにガウンを着られるとたまらないッて云う癖に、今夜はみんなが居るもんだから我慢してるのよ。ねえ、譲治さん、中ったでしょう」
「馬鹿を云うなよ」
「うふふふふ、そんなに威張るなら、降参させてやろうか」
「おい、おい、ちと穏やかでねえね、そう云う話は明日の晩に願いてえね」
「賛成!」
「今夜はみんな公平にして貰いたいなア」
「だから公平にしてるじゃないの。恨みッこがないように、浜さんの方へは此方の足を出しているし、譲治さんの方へは此方を出してるし、―――」
「そうして己はどうなんだい?」
「まアちゃんは一番得をしてるわよ、一番あたしの傍にいて、こんな所へ首を突ン出してるじゃないの」
「大いに光栄の至りだね」
「そうよ、あんたが一番優待よ」
「だがお前、まさかそうして一と晩じゅう起きてる訳じゃねえだろう。一体寝る時はどうなるんだい?」
「さあ、どうしようか、孰方へ頭を向けようか。浜さんにしようか、譲治さんにしようか」
「そんな頭は孰方へ向けたって、格別問題になりやしねえよ」
「いや、そうでないよ、まアちゃんはまん中だからいいが、僕に取っちゃ問題だよ」
「そう? 浜さん、じゃ、浜さんの方を頭にしようか」
「だからそいつが問題なんだよ、此方へ頭を向けられても心配だし、そうかと云って河合さんの方へ向けられても、やっぱり何だか気が揉めるし、………」
「それに、この女は寝像が悪いぜ」
「用心しないと、足を向けられた方の奴は夜中に蹴ッ飛ばされるかも知れんぜ」
「どうですか河合さん、ほんとに寝像が悪いですか」
「ええ、悪いですよ、それも一と通りじゃありませんよ」
「おい、浜田」
「ええ?」
「寝惚けて足の裏を舐めたってね」
「足を舐めたっていいじゃないの。譲治さんなんか始終だわよ、顔より足の方が可愛いくらいだって云うんだもの」
「そいつあ一種の拝物教だね」
「だってそうなのよ、ねえ、譲治さん、そうじゃなかった? あなたは実は足の方が好きなんだわね?」
「公平にしなけりゃ悪い」