谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「あの金で買って上げるよ、ね、いいだろう、…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「あの金で買ってあげるよ。ね、いいでしょ、…」
「だって、そうしたら困らない?」
「困ってもいいよ。どうにかするから」
「じゃあ、どうするの?」
「家に連絡して、お金を送ってもらうよ」
「送ってくれる?」
「ああ、送ってくれるよ。俺はいままで一度も家に迷惑をかけたことないし、二人で家を持つとなればいろいろお金かかるだろうってことは、お母さんも分かってるはずだよ」
「そう?でもお母さんに悪いんじゃない?」
「田舎に連絡すればいいよ」
「別に悪いことじゃないよ。でも俺のポリシーとして、そういうことはしたくなかっただけだよ」
「じゃ、どうしてポリシー変えたの?」
「さっきお前が泣いてるの見て可哀想になっちゃったからさ」
「そう?」
「もうどこにも行かないって、目にいっぱい涙ためてたじゃないか。いつまでたってもお前は子どもみたいだね。大きな赤ん坊…」
「私のパパちゃん!かわいいパパちゃん!」

原文 (会話文抽出)

「あの金で買って上げるよ、ね、いいだろう、………」
「だって、そうしたら困りやしない?………」
「困ってもいいよ、どうにかするから」
「じゃあ、どうする?」
「国へそう云って、金を送って貰うからいいよ」
「送ってくれる?」
「ああ、それあ送ってくれるとも。僕は今まで一度も国へ迷惑をかけたことはないんだし、二人で一軒持っていればいろいろ物が懸るだろうぐらいなことは、おふくろだって分っているに違いないから。………」
「そう? でもおかあさんに悪くはない?」
「田舎へ云ってやればいいのに」
「なあに、悪い事なんかなんにもないよ。けれども僕の主義として、そう云う事は厭だったからしなかったんだよ」
「じゃ、どう云う訳で主義を変えたの?」
「お前がさっき泣いたのを見たら可哀そうになっちゃったからさ」
「そう?」
「あたし、ほんとに泣いたかしら?」
「もうどッこへも行かないッて、眼に一杯涙をためていたじゃないか。いつまで立ってもお前はまるでだだッ児だね、大きなベビちゃん………」
「私のパパちゃん! 可愛いパパちゃん!」


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