谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「巧いもんだね、とてもその真似は役者にだっ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「上手いね。これ、役者でも真似できなそう。顔が西洋人に似てるから」
「そうなの?どこが似てるのかな」
「鼻とか歯並びかな」
「ああ、この歯?」
「うん」
「とにかく君は日本人っぽくないから、普通の和服じゃ映えないよね。洋服にするか、和服にしても変わったデザインにしたらどう?」
「で、どんなデザイン?」
「これからの女性はどんどんアクティブになるんだから、今のみたいに重苦しくて窮屈な服はダメだと思うよ」
「筒袖を着て兵児帯を締めたらどうかと思うんだけど」
「筒袖もいいね。とにかく新しくて変わった感じにすること。日本っぽくもなく、中国っぽくもなく、西洋っぽくもなく、そういうのってあるかな?」
「あったら作ってくれる?」
「うん、作るよ。君にいろんな形の服を作って、毎日着替えてもらいたいんだ。お召とか縮緬とか、高い生地じゃなくていいよ。綿や銘仙で十分だから、デザインを奇抜にすれば」

原文 (会話文抽出)

「巧いもんだね、とてもその真似は役者にだって出来やしないね、顔が西洋人に似ているんだから」
「そうかしら、何処が全体似ているのかしら?」
「その鼻つきと歯ならびのせいだよ」
「ああ、この歯?」
「いー」
「何しろお前は日本人離れがしているんだから、普通の日本の着物を着たんじゃ面白くないね。いっそ洋服にしてしまうか、和服にしても一風変ったスタイルにしたらどうだい」
「じゃ、どんなスタイル?」
「これからの女はだんだん活溌になるんだから、今までのような、あんな重っ苦しい窮屈な物はいけないと思うよ」
「あたし筒ッぽの着物を着て兵児帯をしめちゃいけないかしら?」
「筒ッぽも悪くはないよ、何でもいいから出来るだけ新奇な風をして見るんだよ、日本ともつかず、支那ともつかず、西洋ともつかないような、何かそう云うなりはないかな―――」
「あったらあたしに拵えてくれる?」
「ああ拵えて上げるとも。僕はナオミちゃんにいろんな形の服を拵えて、毎日々々取り換え引換え着せて見るようにしたいんだよ。お召だの縮緬だのって、そんな高い物でなくってもいい。めりんすや銘仙で沢山だから、意匠を奇抜にすることだね」


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