谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「どうだね、ナオミちゃん、ほんとうにお前、…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「ねえナオミ、本当に勉強したい?したいならオレが教えてあげるよ」
「え? ナオミ、言ってみなよ。何がやりたいの?何を習いたいわけ?」
「英語が習いたい」
「ふーん、英語ね。それだけ?」
「あと音楽もやってみたいの」
「じゃあ、オレが月謝を出すから習いに行ったらいいじゃないか」
「でも高校行くにはもう遅いよ。もう15歳だし」
「別に大丈夫だよ。女は男と違って15歳でも遅くないさ。それに英語と音楽だけなら、高校行かなくても家庭教師頼んだらいいじゃん。どう?やる気ある?」
「あるにはあるけど…。本当にさせてくれるの?」
「うん、本当に。でもナオミ、そうするともうここで働けなくなっちゃうけど、それでいい?」
「私が辞めるなら、面倒見てくれるってわけ?」
「そうだよ。責任持って立派な女性に育ててやりたいと思ってる」
「うん、それでいいよ」
「じゃあ、辞めるってことでいいの?」
「うん」
「でもナオミ、それでいいとしても、お母さんやお兄ちゃんはどう言うかな。家の都合とか考えてみないと」
「家の都合なんて、別に大丈夫だよ。誰も何も言わないよ」

原文 (会話文抽出)

「どうだね、ナオミちゃん、ほんとうにお前、学問をしたい気があるかね。あるなら僕が習わせて上げてもいいけれど」
「え? ナオミちゃん、黙っていないで何とかお云いよ。お前は何をやりたいんだい。何が習って見たいんだい?」
「あたし、英語が習いたいわ」
「ふん、英語と、―――それだけ?」
「それから音楽もやってみたいの」
「じゃ、僕が月謝を出してやるから、習いに行ったらいいじゃないか」
「だって女学校へ上るのには遅過ぎるわ。もう十五なんですもの」
「なあに、男と違って女は十五でも遅くはないさ。それとも英語と音楽だけなら、女学校へ行かないだって、別に教師を頼んだらいいさ。どうだい、お前真面目にやる気があるかい?」
「あるにはあるけれど、―――じゃ、ほんとうにやらしてくれる?」
「ああ、ほんとうとも。だがナオミちゃん、もしそうなれば此処に奉公している訳には行かなくなるが、お前の方はそれで差支えないのかね。お前が奉公を止めていいなら、僕はお前を引取って世話をしてみてもいいんだけれど、………そうして何処までも責任を以て、立派な女に仕立ててやりたいと思うんだけれど」
「ええ、いいわ、そうしてくれれば」
「じゃ、奉公を止めると云うのかい?」
「ええ、止めるわ」
「だけどナオミちゃん、お前はそれでいいにしたって、おッ母さんや兄さんが何と云うか、家の都合を聞いて見なけりゃならないだろうが」
「家の都合なんか、聞いて見ないでも大丈夫だわ。誰も何とも云う者はありゃしないの」


青空文庫現代語化 Home リスト