GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『一夕話』
現代語化
「医者の和田って言ったって、柔道の選手で、暴漢退治の大将で、リヴィングストンの崇拝家で、冬でも1枚しか着てない男で、――一言で言うと豪傑だったじゃない?それが君、芸者を知ってるんだ。しかも柳橋の小えんっていう、――」
「君はこの頃住むところを変えたの?」
「住むところを変えた?なんで?」
「君が連れて行った時なんだろう、和田がその芸者に会ったのは?」
「早とちりしないで。和田なんざを誰が連れてくもんか。――」
「あれは先月の何日だったかな?確か月曜か火曜だったけど。久しぶりに和田と会ったら、浅草に行こうって言うじゃない?浅草はあまり好きじゃないけど、昔からの親友の言うことだから、俺も素直に賛成してさ。昼間っから六区に出かけたんだ。――」」
「すると映画館の中ででも偶然会ったのか?」
「映画館ならまだしも、メリーゴーランドときたら。おまけに2人とも木馬の上にちゃんとまたがって乗ってたんだからな。今考えてもばかばかしいったらありゃしないよ。でもそれも俺の提案じゃない。和田が乗りたがるから、付き合ってちょっと乗ってみたんだ。――だけどあいつは楽じゃないぜ。野口みたいに胃が弱いのは乗らない方がいいよ」
「子供じゃないんだから。木馬に乗るやつがいるもんか?」
原文 (会話文抽出)
「僕はそいつを見せつけられた時には、実際今昔の感に堪えなかったね。――」
「医科の和田といった日には、柔道の選手で、賄征伐の大将で、リヴィングストンの崇拝家で、寒中一重物で通した男で、――一言にいえば豪傑だったじゃないか? それが君、芸者を知っているんだ。しかも柳橋の小えんという、――」
「君はこの頃河岸を変えたのかい?」
「河岸を変えた? なぜ?」
「君がつれて行った時なんだろう、和田がその芸者に遇ったというのは?」
「早まっちゃいけない。誰が和田なんぞをつれて行くもんか。――」
「あれは先月の幾日だったかな? 何でも月曜か火曜だったがね。久しぶりに和田と顔を合せると、浅草へ行こうというじゃないか? 浅草はあんまりぞっとしないが、親愛なる旧友のいう事だから、僕も素直に賛成してさ。真っ昼間六区へ出かけたんだ。――」
「すると活動写真の中にでもい合せたのか?」
「活動写真ならばまだ好いが、メリイ・ゴオ・ラウンドと来ているんだ。おまけに二人とも木馬の上へ、ちゃんと跨っていたんだからな。今考えても莫迦莫迦しい次第さ。しかしそれも僕の発議じゃない。あんまり和田が乗りたがるから、おつき合いにちょいと乗って見たんだ。――だがあいつは楽じゃないぜ。野口のような胃弱は乗らないが好い。」
「子供じゃあるまいし。木馬になんぞ乗るやつがあるもんか?」