佐々木味津三 『右門捕物帖』 「しからば、雪舟は何がゆえに盗みとったのじ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「しからば、雪舟をなぜ盗み取ったのだ」
「それがあっしの苦心なんですよ。旦那はさっき、バカの小知恵とおっしゃいましたが、私とすりゃあれを盗むのが一番の近道だと思ったからね。さればこそ、一生一度の盗みもしたんですが、それってものは、あのロウソク屋の長兵衛というヤツがちょっと気に入らない癖があってね。今手元に集めている書画の掛け物はたいがい2、300幅でもあるんでしょうが、1本だって自分の金を出して買った品はねえんですよ」
「では、いずれも盗み取った品物というのか」
「いえ、もっと根の深いやり口で巻き上げるんです。一言で言えば、みんなゆすり取るんですよ。そのゆすり方がまた並大抵のゆすり方じゃねえんだがね、どこかにいい品があることを耳に入れると、しつこくその家をつけ回して、何かそこの家の急所になるような秘密とか粗探しをやったうえに、うまく巻き上げてしまうんですよ。だから、生島屋のこの雪舟にしたって、やっぱりその手口でね、この間長兵衛がこれをくれろと言って、ゆすりに来たと小耳に挟んだものだから、長兵衛がくれろというからには、何か生島屋の急所となる秘密か粗を握ってからのことだろうと思いやったので、もしかすると、俺の睨んでいる急所じゃねえかと思ったところから、これを盗み取れば、自然と事が大きくなって生島屋のほうでも慌てだすだろうし、長兵衛のほうでもゆすりの種をなんかの拍子に明るみへさらけ出さないもんでもあるまいと思って、ちょっと回りくどい方法でしたが、試して盗んでみたんですよ」

原文 (会話文抽出)

「しからば、雪舟は何がゆえに盗みとったのじゃ」
「それがあっしの苦心なんですよ。だんなはさっき、バカの小知恵とおっしゃいましたが、あっしとすりゃあれを盗むのがいちばん近道と思いやしたからね。さればこそ、一生一度の盗みもしたんですが、それってものは、あのろうそく屋の長兵衛めがちっと気にいらねえ癖があってね。いま手もとに集めている書画の掛け物はおおかた二、三百幅もあるんでしょうが、一本だっててめえが金を出して買った品はねえんですよ」
「では、いずれも盗みとった品物じゃと申すのか」
「いいえ、もっと根のふけえやり口で巻きあげるんですがね。ひとくちにいや、みんなゆすり取るんですよ。そのゆすり方ってものがまた並みたいていのゆすりようじゃねえんだがね、どこかにいい幅のあることを耳に入れると、しつこくその家をつけまわして、何かそこの家の急所になるような秘密とかあら捜しをやったうえに、うまいこと巻きあげちまうんですよ。だから、生島屋のこの雪舟にしたって、やっぱりその伝でね、こないだ長兵衛がこいつをくれろといって、ゆすりに来たと小耳へ入れたものだから、長兵衛がくれろというからにゃ、何か生島屋の急所となる秘密かあらを握ってからのことだろうと思いやしたので、もしかすると、おれのにらんでいる急所じゃねえかと思ったところから、こいつを盗み取らば、自然事が大きくなって生島屋のほうでもあわてだすだろうし、長兵衛のほうでもゆすりの種をなんかの拍子に明るみへさらけ出さないもんでもあるまいと思って、ちっとまわりくどい方法でしたが、ためしに盗んでみたんですよ」


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