佐々木味津三 『右門捕物帖』 「情状不憫にも思うが、天下のご法度をまげる…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「情状は不憫にも思うが、天下のご法度を曲げることはできない。遠島を申しつけるように上に上申するから、そのように心得よ!」
「えーっ! 遠島――あの、遠島ですか!」
「不服か」
「でも、わたしの密貿易の罪は、すでに長崎お奉行様からご赦免になっていませんか!」
「囚人とは生意気だ、許しなくして人をむごたらしく殺した罪じゃ」
「でも、それは、それは、自分の身を守ったためなんです。それに、私は今こそ浪人の身ですが、れっきとした武士の身分ではなかったですか!」
「愚かなやつだな。これほど言っても、まだ私の慈悲がわからないか。そちは今何を言った、子の可愛さゆえに人も殺したとさっき言ったではないか。さればこそ、その子のために、そちの命が長くなるように慈悲をかけて、縛り首打ち首にもすべきところを遠島に上申するというのだ。それも、島流しすべきものはそちひとりではない。その妻も、夫の罪を手助けした罪で、おなじく遠島だ。息子は――上の立つ者として見逃すことはできないが、係り役人などに用いておくような、手荷物などに見せかけて船にうまく積み込んだりするな。どうだ、それでもまだ私の慈悲がわからないか」
「はッ……よくわかりました。息子の手荷物のことも、よく心得ております。ありがとうございます。ありがとうございます」
「これで私の八番手柄は、9分通り片付いた。知恵をお貸しすると言ったら失礼だが、ついでに卍組残りの三人を召し取るよう、私がちょっと一筆書いてみよう。それを貴殿の手柄にしてくれ」

原文 (会話文抽出)

「情状不憫にも思うが、天下のご法度をまげることは相成らぬ。遠島申しつけられるよう上へ上申するから、さよう心得ろ!」
「えッ! 遠島――あの、遠島でござりまするか!」
「不服か」
「でも、てまえの密貿易の科は、すでに長崎お奉行さまからご赦免になっているではござりませぬか!」
「囚人とはいいじょう、許しなくして人をむごたらしくあやめた罪じゃ」
「でも、それは、それは、わが身を守ったがための科でござります。そのうえ、てまえは今こそ浪々の身でござりまするが、れっきとした士籍にある身ではござりませぬか!」
「愚かなやつじゃな。これほどいうても、まだわしの慈悲がわからぬか。そちは今なんと申した、子のかわいさゆえに人も切ったと申したではないか。さればこそ、その子ゆえに、そちの命の長かるべきよう慈悲をたれて、縛り首打ち首にもすべきところを遠島に上申すると申すのじゃ。それも、島流しすべきものはそちひとりではない。それなる妻女も、夫の罪業を手助けいたした罪により、同罪の遠島じゃ。せがれは――上の席にあるものとして教ゆることはならぬが、係り役人なぞに用いてはならぬそでの下を使って、手荷物なぞに装い、うまいこと船に積み込んだりしてはあいならぬぞ。どうじゃ、まだそれでもわしの慈悲がわからぬか」
「はッ……よくわかってござります。せがれの手荷物のことも、よく胸におちてござります。ありがとうござりました。ありがとうござりました」
「これでてまえの八番てがらは、九分どおりかたづいてござる。知恵をお貸し申すといったのでは失礼にござるが、ついでに卍組残りの三人をもめしとられるよう、てまえがちょっと一しばい書いてしんぜますから、それをご貴殿のてがらになされい」


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