佐々木味津三 『右門捕物帖』 「いや、よいことをお聞かせくだされた。では…

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青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「へえ、いいこと聞かせてもらった。で、その辻占売りが旦那さんを理不尽に斬りつけた後、そのまま逃走したって言うんですか」
「いや、切り倒したまま置いてったんですよ。ウチは私とこの子しかいなかったので、留守なの知って図に乗ったんですかね、北国街道に行くから金20両出せって脅して、金を渡すとすぐに逃げやがりました」
「ほう、そんな大胆なこともしたのか。――いや、重要なこと聞けて助かった。下手人の似顔絵はすでに上がってるから、2日と経たずに、この俺が旦那さんの仇を討ってやりましょう。じゃ、念のため仏さんちょっと見させてくれよ」
「はい、どうぞ……」

原文 (会話文抽出)

「いや、よいことをお聞かせくだされた。では、それなるつじうら売りは、ご主人を理不尽に切りつけて、そのまま立ち去ったと申さるるのでござるな」
「いいえ、それが切り倒しておきまして、このとおり家内はわたくしとこの子どもとのふたりきりでござりましたから、無人の様子を知って急に気が強くでもなりましたものか、今より中仙道へ参るから、路用の金を二十両ばかり出せとおどしつけまして、金をうけとるとすぐに逃げ出しましてござります」
「ほほう、さような大胆不敵なことまでいたしおりましたか。――いや、なによりなことを承って重畳でござる。下手人の人相書きはすでに上がっているゆえ、二日とたたぬうちに、きっとこの右門が、ご主人のかたきを討ってしんぜましょうよ。では、念のために、仏をちょっと拝見させていただきますかな」
「はっ、どうぞ……」


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