佐々木味津三 『右門捕物帖』 「な、伝六ッ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「おい、伝六ッ」
「え?」
「余計なことは言うもんじゃねえよ。むっつり右門も年食ったなと、さっき他人のことのようにからかっていたが、俺もこの通り、こんなでかいネタを見逃すんだからな。うっかりしたことを言うもんじゃねえよ。その女親方の口にかみ切られている振り袖をよく見ろよ」
「何か、混乱の中で袖の様子でも変わったんですか?」
「いや、変わっちゃいないがね。見りゃ分かるだろう、桜の花が染め抜いてあるから、さっき見た竹丸の竹模様、梅丸の梅模様だったところから推して、多分その振り袖衣装を着ていた軽業娘は桜丸とでもいう名だろうが、見逃したでかいネタってのは、その片袖の一枚下だよ」
「下に何か手品の仕掛けでもありますかい?」
「あるんだから不思議じゃねえか。ちょっと上のをまくってみろよ」
「よよッ。なるほど、下にもう一枚模様の違った衣装の裾みたいなものをかみ切っているんですね。しかもこりゃ、さっき梅丸が着てやがったやつと同じ梅模様じゃござんせんか」
「だから、右門もとんだ年寄りだぜ。いくら梅と桜と紛らやすい模様だからって、これに気が付かねえようじゃ、自分でも皆さんに申し訳ねえよ。だが、もうこうなったら俺の縄張りだッ。お前ら2人とも、さっき見惚れたべっぴんを今すぐ拝ませてやるから、ついてこい!」

原文 (会話文抽出)

「な、伝六ッ」
「えッ」
「めったなことはいうもんじゃねえよ。むっつり右門ももうろくしたなと、さっきひとごとのようにひやかしていたが、おれともあろうものが、こんなでかいネタを見のがすんだからな。うっかりしたせりふはきけねえものさ。その女親方の口にかみ切られている振りそでをよく見ねえな」
「何か、るすの間にそでの様子でも変わったんですかい」
「いいや、変わりゃしねえがね。見りゃ、桜の花が染めぬいてあるから、さっき見た竹丸の竹模様、梅丸の梅模様だったところから推しはかって、おそらくその振りそで衣装をつけていたかるわざ娘は桜丸とでもいう名だろうが、でけえネタを見のがしたというな、その片そでの一枚下だよ」
「下に何か手品のしかけでもありますかい」
「あるんだから奇態じゃねえか。ちょっと上のをまくってみなよ」
「よよッ。なるほど、下にもう一枚模様の違った衣装のすそみてえなものを食いちぎっておりますね。しかもこりゃ、さっき梅丸が着ていやがったやつとおんなじ梅模様じゃござんせんか」
「だから、右門もとんだもうろくをしたものさ。いくら梅と桜と紛れやすい模様だからって、これに気がつかねえようじゃ、われながら皆さまに申しわけがねえよ。だが、もうこうなりゃおれの畑だッ。ふたりとも、さっき見とれたべっぴんをじきじきに拝ましてやるから、ついてきな!」


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