佐々木味津三 『右門捕物帖』 「だんなのするこったから何かいわくがござん…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「旦那のすることだから何か理由はあるんでしょうけど、まさかこの程度の暑さで頭がおかしくなったんじゃありませんよね?」
「相変わらずの冗談好きだな。さ! 深川だ、深川だ! 深川に行って、あの小娘のお母さんを洗ってくるんだ!」
「え? お母さん……? だって、小娘は明らかに、父親の死に方がおかしいから洗ってほしいって言いましたよ。旦那の耳って、どこについてるんですか?」
「バカだな。俺の耳は横に付いてるかもしれないけど、目は天竺まで届いてるぜ。お前にはあの子の首筋と手の傷が見えなかったのか!」
「え……? 傷……? なるほどね。言われてみれば、3か所ばかり水ぶくれがありましたけど、でもそれって、お母さんが作ったものなんですか?」
「当たり前だよ。あの小娘が俺に訴えたいのは、父親のことでもあるが、本当はあの傷が主なんだよ。だけど、武士の血を受け継いでるだけあって年より頭がいいから、お母さんの仕打ちだとかそういうことは、家の恥になると思って、俺にさえ言えねえんだよ。だから、見なかったか、俺が察して、しばらく手伝いでもするかといったら、あの通り、ぽろぽろとうれし泣きしただろ? きっと、お母さんに何か家に戻りたくないような事情があるに違いないから、さっさと行って引っ張り出してこい」
「なるほどね。言われてみれば、確かに怪しいや。じゃ、もうこっちのお糸坊のことは用が済んだんでしょうから、ついでに送って帰っちゃってもいいすよね」
「ああ、いいよ。途中で飴棒でも買ってやってな――ほら、2朱銀だ」
「ありがたいッ。残りは寝酒と駕籠代にでもしろってなぞですね。では、さっさと行ってきますから、手ぐすね引いて待っておいてください」

原文 (会話文抽出)

「だんなのするこったから何かいわくがござんしょうが、まさかこれっぽちの暑さで、脳のぐあいをそこねたんじゃござんすまいね」
「あいかわらずのひょうきん者だな。さ! 深川だ、深川だ! 深川へいって、あの小娘のおふくろを洗ってくるんだ!」
「えッ、おふくろ……? だって、小娘はまさに判然と、おやじの死に方がおかしいから、そいつを洗ってくれろといいましたぜ。だんなの耳は、どこへついているんでござんすかい」
「あほうだな。おれの耳は横へついているかもしれねえが、目は天竺までもあいていらあ。てめえにゃあの子の首筋と手のなま傷がみえなかったか!」
「え……? なま傷……? なるほどね。そういわれりゃ、三ところばかりみみずばれがあったようでござんしたが、ではなんですかい。そのみみずばれは、おふくろがこしらえたものとでもおっしゃるんですかい」
「あたりめえよ。あの小娘のおれに訴えてえものは、おやじのこともことだが、ほんとうはあのみみずばれのことがおもにちげえねえんだ。けれども、さすがは武士の血を引いて年より利発者なんだから、おふくろの折檻やそんなことは、家名の恥になると思って、このおれにさえいわねえんだよ。だから、見ねえな、おれが察して、当分ままたきのおてつだいでもするかといったら、あのとおり、ぽろぽろとうれし泣きをやったじゃねえか。きっと、おふくろに何か家へ帰りたくねえようないわくがあるにちげえねえから、ひとっ走り行ってかぎ出してこい」
「なるほどね。いわれてみりゃ、大きにくせえや、じゃ、もうこっちのお糸坊のほうはご用ずみでしょうから、道のついでに帰してもようがすね」
「ああ、いいよ。途中であめん棒でも買ってやってな――ほら、二朱銀だ」
「ありがてえッ。残りは寝酒と駕籠代にでもしろってなぞですね。では、ひとっ走り行ってめえりますから、手ぐすね引いて待っていなせえよ」


青空文庫現代語化 Home リスト